dancyu本誌から
【切れば、澄んだバターが流れ出す!】魅惑のご馳走、坂田阿希子さんのチキンキエフ

【切れば、澄んだバターが流れ出す!】魅惑のご馳走、坂田阿希子さんのチキンキエフ

ご存知ですか?チキンキエフ。バターの塊を鶏むね肉に包み、油で揚げる…という恐ろしくも魅力あふれるこの料理。dancyu2025年秋号で取材し、カメラマンもライターも編集も、みんなが虜になりました。バターを愛する料理研究家・坂田阿希子さん直伝のレシピをご紹介します。

バター×揚げもの、魅惑の共演!

チキンキエフはウクライナ料理に起源をもつとされる、鶏肉のカツレツ。故郷・新潟のとあるロシア料理店で子供の頃に出会って以来、坂田阿希子さんの大好物になったのだそう。

「ナイフを入れた途端に、澄んだバターソースがドバッとあふれ出てくる。なんて素敵な料理なの!と驚いたんです」(坂田さん)

その体験を元に、坂田さんが料理人として培ったフレンチや洋食の技術を注ぎ込んで洗練させたのが、今回のオリジナルレシピ。バターに肉を巻いて揚げるため、バターが焦げ付かずに加熱されてさらりとした味わいに。レモンやパセリ、にんにくを混ぜたバターを事前に仕込むなど少々手間はかかるものの、だからこそ美味しさと感動はひとしお。休日に、冷えた白ワインを用意してトライしてみたくなる一皿です。

“チキンキエフ”のつくり方

材料材料 (2人分)

鶏胸肉2枚
バター50g(食塩不使用)
A
 ├ レモン汁小さじ1
 ├ レモンの皮小さじ1(すりおろす)
 ├ パセリ大さじ1(みじん切り)
 └ にんにく1/2片(すりおろす)
溶き卵1個分
小麦粉適量
パン粉適量(細目)
適量
胡椒適量
米油適量
ラード適量(*)
サラダ菜適量
レモン2切れ(くし形切り)

*揚げ油となる米油とラードは1:1~1:2の割合でブレンドする。ラードを加えることで温度が下がりにくく、衣の風味や香ばしさが増す。油の量は、鍋に入れた肉がほぼ隠れるぐらいが目安。

1バターを仕込む

バターを室温で柔らかくし、Aを加えてよく混ぜる。2等分にしてそれぞれラップの上に置き、長さ3cmほどの塊になるように成形して包み、冷凍庫で冷やし固める。

バターを仕込む
バターを仕込む

2鶏むね肉を開く

鶏むね肉一番薄い部分を基準に、全体が同じぐらいの厚みになるよう、肉の厚い部分に包丁を入れていく。最初の形から2倍ぐらいの大きさに仕上げるようなイメージで。

鶏むね肉を開く
鶏むね肉を開く

3下味をつける

両面にしっかりと塩と胡椒をふり、巻いたときに内側になるほうにレモンの皮少々(分量外)をすりおろしてかける。

下味をつける

4バターを鶏むね肉で包む

3を縦長に置き、中心に1を置く。バターを巻き込むようにして包んだら、合わせた上下の端をつま楊枝で留める。ロールした両側も肉で蓋をするように折り畳み、つま楊枝で留める。揚げているときにバターが漏れにくくなるようにしっかりと!

バターを鶏むね肉で包む
①縦長に置いたむね肉の上下の端を、バターの上で合わせて→
バターを鶏むね肉で包む
②つま楊枝で縫うようにして留める。→
バターを鶏むね肉で包む
③左右の端も、できるだけ隙間ができないように留める。→
バターを鶏むね肉で包む
④使ったつま楊枝の本数を覚えておくと、揚げ上がりに取り除く際、助かる。

5衣をつける

4に小麦粉を全体につけ、溶き卵をまとわせる。これを2回繰り返してから、パン粉をしっかりとつける。小麦粉と溶き卵を2重にまとわせることで、揚げ油の中で肉が開きにくくなる。

衣をつける
衣をつける

6揚げる

170℃の油にゆっくりと入れ、さわらずに5分揚げる。こんがりと色づいたら鍋から上げて1分ほど休ませる。鍋に戻して再び1分揚げて鍋から上げる。つま楊枝を外し皿に盛り、付け合わせのサラダ菜とレモンを添えて完成!

揚げる
完成
完成
サクサクに揚がった衣を切ると、肉の中からソースがあふれる。レモンとパセリが爽やかに香り立つバターソースは、鶏むね肉のあっさりとした味わいと相性抜群。食べ進めるうちに衣にソースが染みてきて、これがまた旨い!ボリューミーな見た目だが、後味は想像以上に軽やか。

教える人

坂田阿希子 料理研究家

フランス菓子店やフランス料理店での経験を重ねたのち、料理研究家として独立。2019年に東京・代官山に「洋食KUCHIBUE」をオープンし、オーナーシェフとして厨房で腕をふるう。同店で開催する料理教室も人気。『温かいからおいしいお菓子』『おやつ教本』などお菓子部門の著書も多数。

文:宮内 健 写真:工藤睦子