大原千鶴さんの「今宵のあて」
七夕にちなみ、五色をイメージしてつくった「揚げ春雨の海老あん」 

七夕にちなみ、五色をイメージしてつくった「揚げ春雨の海老あん」 

行事や歳事記への関心はだんだん希薄になりつつありますが、意識することで季節の巡りや節句の意味を知ることができます。京都では七夕は旧暦で行うことも多く、今年は特に遅く8月29日になります。七夕にちなんだお料理を、お酒に合うようにアレンジしたのが「揚げ春雨の海老あん」。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とコツを教えていただきました。

夜空を仰ぎながら、度数低めのビールで軽快に味わう

五節句の一つである七夕は、中国の牽牛と織女(しょくじょ)の物語にあやかり、機織りや裁縫の上達を願うお節句のこと。祈りとともに供えた五色の糸にちなんで、料理に素麺を使いますが、お酒のつまみになるようにちょっと趣向を変えて、春雨を揚げてみました。
五色は古代中国の陰陽五行説に基づいた色で、青をオクラ、赤を海老、黄色をかぼちゃ、白を春雨、黒(紫)をなすで表し、天の川に見立てた春雨の上に星のように見栄えよく、ちりばめています。
海老あんは、材料の大きさを揃えて切り、油をからめて電子レンジにかけると簡単かつ驚きの美味しさになります。とろっとしたあんと、揚げたてのパリパリ食感の春雨を楽しめ、お酒はよ~く冷やした度数低めの軽快なビールを合わせました。
夜空を仰ぎ、壮大なロマンに思いを馳せながら味わっていただきたい一品で、夏のつまみや締めの一品としてもお薦めです。

材料材料 (2人分)

海老中2尾(50g)(ブラックタイガー)
かぼちゃ30g
なす1/3本(30g)
オクラ2本(20g)
春雨10g(乾燥)
胡麻油小さじ1
薄口醤油小さじ1/2
ひとつまみ
米油適量

1海老の下準備

海老は殻をむいて竹串で背ワタを取る。片栗粉小さじ1(材料外)をまぶして水小さじ2を加えてもみ、洗ってキッチンペーパーで水気を拭き、1.5cm幅に切る。

2野菜を切る

かぼちゃは1.5cm角に切る。なすは1.5cm角に切ってさっと水にさらして水気をきる。オクラはさっと水に濡らして塩少々(分量外)でもんで洗い、水気をきってヘタを切り落とし、1.5cm幅に切る。春雨はキッチンばさみで半分の長さに切る。

3海老あんをつくる

耐熱ボウルに①と②のかぼちゃ、なす、オクラを入れて、胡麻油をまぶし、ふんわりとラップをして600Wの電子レンジに2分かける。出てきた汁気はそのままで、温かいうちに、薄口醤油と塩を加えて混ぜる。

海老あんをつくる

4春雨を揚げる

②の春雨を190℃に熱した米油に入れ、膨らんで白くなったら取り出し、油をきる。

5仕上げる

器に④を盛り、③をかける。

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。

文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ

西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。