料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回のお題は、夏にたっぷり仕込むことの多い“ラタトゥイユ”。余ったときは、ぜひコレをつくってください!
見ているだけで元気になってくる、くっきり色鮮やかな夏野菜。トマト、なす、ズッキーニなどが安くておいしいこの季節、常備菜として“ラタトゥイユ”をつくる人は多いはず!尾身さんにとっても夏の定番なのだとか。
「あったかくてもおいしいし、暑い日にキリッと冷やしたのを食べるのもいいですよね。オムレツにかけるもよし、パスタソースに使うもよし。つくりおきしておけば活躍すること間違いなし!おいしくつくるコツは、生のトマトだけでなく、ホールのトマト缶も入れること。旨味が増して、コクが出ますよ!」
いつでも食べたい常備菜ではあるが、続くと飽きてくることもある。目先の変わるアレンジレシピを知っておけば、最後までおいしく食べきれそうだ。そこで、尾身さんがすすめるのは、なんとチュニジア料理!
「“ブリック”を知ってますか?小麦粉の生地で卵などの具材を包んで揚げた、チュニジアではポピュラーな料理なんです。初めて食べたのはずいぶん前ですが、イベントに出店していた大使館の屋台の人がとっても手際よく包んで揚げていて、食べたらすごくおいしかったの。ラタトゥイユがあればとっても簡単につくれるので、ちょっとだけ残っちゃったときにうってつけなんです!」
“ブリック”の魅力は、こんがり揚がった皮と、とろ~りとした卵のおいしさのコントラスト。具材は卵が主役だが、ソースと具材を兼ねるラタトゥイユ、チーズを一緒に包めば、さらにリッチな味になるというのだ。
また、本来はパートブリックと呼ばれる薄いクレープ生地で包むが、尾身さんは春巻の皮で代用する。ここで、ちょっとしたコツがあるのだとか。
「春巻きの皮は1枚だけだと破れやすいし、揚げ上がりもしんなりしてしまうんです。なので、皮は2枚くっついたままはがさず、重ねて使ってください。パリッと揚がって、食感もクリスピーになります。おいしさがぜんぜん違いますから!」
そう話しながら、テキパキと包んで揚げてくれた尾身さん。揚げたてにナイフを入れると皮はザクザクッ、ラタトゥイユ&卵の黄身がとろ~り。スパイスのいい香りもたまらない!
「ラタトゥイユにクミンシードをひとつまみふってから包むと、異国の味になります。もしなければ、カレー粉でもいいですよ。ぜひ、夏の家飲みにつくってみてくださいね!」
ラタトゥイユ | 50g(汁気をしっかりきって粗く刻む) |
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卵 | 1個 |
シュレッドチーズ | 15g |
クミンシード | ひとつまみ |
春巻きの皮 | 2枚(はがさずくっついたまま使う) |
揚げ油 | 適量 |
春巻きの皮2枚をはがさずに広げる。上半分にシュレッドチーズをのせ、その上にラタトゥイユをのせ、クミンシードをふる。
卵を割り、卵白を少し刷毛にとって、春巻きの皮の上2辺の縁にノリとして塗る。ラタトゥイユの土台の上に卵をのせる。
対角線で半分に折って三角形になるように包み、しっかり縁をおさえて具材が出てこないように閉じる。
揚げ油を190℃に熱し、ブリックを3分ほど揚げる。卵黄がかたまる前に取り出したいので、タイマーをかけておくとよい。また、包んでおくと水分が皮にしみてしまうので、揚げる直前に包むのもポイント。
投入してから3分経つと、縁がこんがり色づいてくるので、取り出す。その後も余熱で皮がさらに色づき、さらにこんがりとした色に変わる。黄身がかたまらないうちに、揚げたてを食べるのがおすすめ。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之