料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回のお題も、余った“アジの干物”。高知県で親しまれている、意外な郷土料理に変身します!
今回のお題は再び、一枚だけ残った“アジの干物”である。前回の“冷や汁”では、魚焼きグリルではなく、フライパンで蒸し焼きにする方法を教わったが、今回も同じように蒸し焼きにして“なすのタタキ”をつくるという尾身さん。なんと、アジの干物なのになす?しかもタタキって……?
「タタキと聞いて思い浮かぶのって、鰹じゃないですか。でも、高知県東部の安芸市には“なすのタタキ”があるんですよ!素揚げしたなすを並べて、アジの塩焼きのほぐし身をのせて、薬味をたっぷりのせてポン酢をかけたら出来上がり。安芸はなすの大産地で、薬味のみょうがや生姜も特産品。アジもよく釣れるし、ある食材を組み合わせることで、“鰹のタタキ”に見立てたんでしょうね」
そもそも“タタキ”ってどういう料理なの?という疑問が頭に浮かんだ人も多いだろう。“鰹のタタキ”はもともと、鰹に塩やタレをかけてたたいて味をなじませたことに由来している。しかし今では、“鰹のタタキ”は、藁焼きにしたものを切って、薬味をたっぷりのせて食べるものになっている。そして、“なすのタタキ”にいたっては、“鰹のタタキ”風の料理というわけなのだ。納得!
さあ、“アジの干物”の出番である。地元では、アジは塩焼きにして使うが、干物を使ってつくろうというのだ。さてお味はいかに……?
「食べてみて~、すごくおいしいから!」
という尾身さんの言葉と共に、食卓に運ばれてきた“なすのタタキ”。なすの紺碧の皮がツヤツヤと光り、ふっくら蒸し焼きにしたアジの干物がたっぷり。薬味の彩りも美しく、これは映える!
さっそく味わってみると、ジューシーな素揚げのなすに、ほぐした干物の旨味と塩気が相性抜群。さらに、薬味とポン酢の力で、食べごたえがあるのにサッパリとして、どんどん食べ進んでしまう……!おかずにも、酒のつまみにもなる。たった一枚のアジの干物がこんなにご馳走の一皿になるとは!
「これなら3本入りのなすも、残さず食べきれちゃいますよ。なすがおいしくなるこれからの季節に、ぜひつくってみてくださいね!」
アジの干物 | 1枚 |
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なす | 3本 |
ミニトマト | 4個 |
小ねぎ | 3、4本 |
生姜 | 1かけ |
青じそ | 5、6枚 |
みょうが | 2本 |
にんにく | 1片(薄切り) |
サラダ油 | 適量 |
ポン酢 | 適量 |
なすはヘタを落とし、縦半分に切る。皮に細かく鹿の子に包丁目を入れ、さらに長さを半分に切る。軽く水にさらしてアクを抜き、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取っておく。
ミニトマトは8等分に切る。小ねぎは小口切りに、生姜はみじん切りにm青じそはせん切りにする。みょうがは縦半分に切ってから小口切りにし、軽く水にさらして水気を切っておく。
クッキングシート(30×30cm)の四隅をねじって浅い箱をつくってフライパン(直径26cm)に敷き、アジの干物を置く。シートの箱の外側に水150ml(分量外)を注ぎ、中火にかける。沸騰したら蓋をして弱火に落とし、7~8分、水分がなくなるまで蒸し焼きにする。
蒸し焼きにしたアジの身をほぐす。
フライパンの底から1cmの高さまで揚げ油を入れて160~170℃に熱し、にんにくを入れて揚げる。軽く色づいたら取り出す。
にんにくの香りが移った揚げ油を170~180℃に熱し、油が少ない場合はここで足しておく。なすを切り口を下にして入れ、素揚げする。軽く色づいたら返し、皮目も揚げる。箸で触ったときに柔らかくなったら取り出す。
器になすの素揚げを並べて、アジのほぐし身をのせる。薬味をのせてポン酢をまわしかけ、にんにくチップを散らす。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之