ウニと生クリームの濃厚な味わいに、白ワインやトマトジュースの酸味を加えることで軽やかに、そして酸が日本酒と呼応します。酒肴家として有名な料理研究家の稲垣知子さんに、日本酒と相性抜群なパスタレシピを教えてもらいました。
「パスタのなかには、ワインよりも日本酒が飲みたくなるメニューがあるんです」と、酒肴家の稲垣知子さん。今回紹介するパスタも「ホタルイカと菜の花をさっと炒めたり、ねぎをとろとろになるまで焼いたり。いわば、日本酒のつまみをパスタで和えたようなメニューです」と笑う。稲垣さんにとって、日本酒が欲しくなるパスタとは、主に次の3タイプ。
❶クセのある魚介でつくるパスタ
❷和を感じさせる野菜でつくるパスタ
❸味がふくらむ濃厚ソースのパスタ
❶は日本酒のアテとしておなじみの食材でつくるパスタ。白ワインを合わせると生臭みが立ってしまう魚介も、日本酒ならばそれらの旨味をしっかりキャッチして、あと味もすっきりまとまる。
❷は白ねぎやうどなど、和の野菜をオリーブオイルで違和感なくパスタと合わせたメニュー。野菜の優しい味わいと日本酒が手を取り合い、おだやかで心地よい気分にさせてくれる。
いっぽう、❸はガツンと濃厚なソースが主役。ワインも合うが、おすすめは日本酒のぬる燗。お酒の熱で口の中のソースがほどけ、旨味が何倍にもなる。日本酒が調味料のような働きをするのが実感できるはずだ。
パスタにはワインと決めつけず、食材の個性に合った日本酒を選べば、新たなおいしさが発見できるに違いない。
個性のある魚介系パスタには、味の要素が多く、ボリュームがありながら、きりっとした酸に特徴のある日本酒が向く。ウニのコクやホタルイカのワタ、鰯の脂の味など、魚介のおいしさを酒の「旨味」が受け止め、生臭さやクセにつながるニュアンスを「酸」がきれいに流してくれる。スパークリングの泡も、酸と同じような役割を果たすのでおすすめ。
ウニは生のおいしさを生かしたいので、火を止めてから混ぜ合わせる。ウニと生クリームだけではもったりとして重めな仕上がりになるが、煮詰めた白ワインとトマトジュースのおだやかな酸がソースの味を軽やかに調整してくれる。パスタはウニクリームがからみやすいリングイネを。
リングイネ | 100g |
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生ウニ | 60g |
アンチョビ | 2枚(5g)(フィレ) |
にんにく | 1/2片分(みじん切り) |
生クリーム | 100ml |
白ワイン | 50ml |
トマトジュース | 50ml(食塩不使用) |
オリーブオイル | 小さじ1 |
塩 | 適量 |
鍋に水2L、塩大さじ1と1/2を入れて沸かし、リングイネを表示時間より1分短くゆでる。
フライパンににんにく、アンチョビ、オリーブオイルを入れて中火にかけ、ゴムベラなどで軽く混ぜる。にんにくの香りが立ち、アンチョビが細かくほぐれたら白ワインを加えてよく混ぜながら煮詰める。
白ワインが半量くらいになったらトマトジュースを加え、混ぜながらほぼ水分がとんでペースト状になるまでしっかりと煮詰める。
生クリームを加えて混ぜながら軽くとろみがつくまで煮詰めたら、①のリングイネを湯をきらずにフライパンに直接加え、強火にしてざっくり合わせる。
ウニは飾り用を少し取り分けて残りを加えて火を止め、ほぐしながら混ぜ合わせる。味をみて足りなければ塩でととのえる。器に盛り、飾り用のウニをのせる。
和食からエスニックまで、ジャンルを超えて日本酒に合う酒肴を探求。「パスタで飲む」も、稲垣さんにとっては当たり前のこと。「料理を食べた後、お皿に残ったおいしいエキスに、ゆでたパスタをからめてさらに飲むことも(笑)。アクアパッツァは特におすすめです」
※この記事の内容はプレジデントムック技あり!dancyu「パスタ」に掲載したものです。
文:佐々木香織 写真:宮濱祐美子