自他ともに認めるラーメンマニアかつ、レコード番長の異名を持つ人気DJ須永辰緒さんが、ラーメンレシピとともに、そこに込めたテーマや思いをもとに組んだ音楽のプレイリストをご紹介する新連載「須永辰緒のMUSIC&RAMEN」。第一回は「王道」をテーマに、スーパーでそろう材料だけにも関わらず、驚くほど深い味わいを持つ醤油ラーメンを披露します。
DJの僕がラーメンレシピを披露するとは、意表をつかれたかもしれませんがご勘弁下さい。大人の(特に男性の)嗜みは色々ありますが、その矛先が料理に向かう人も少なくないと思います。
今や国民食ともいえるラーメンの世界は百花繚乱。僕は年間200杯以上のラーメンを食べます。決してコレクターとかラーメンインスタグラマーではありません。お店を食べ歩きそこで持ち帰った味や技術を趣味の自作ラーメンに反映させるためです。
「ラーメン発見伝」という漫画が師匠という独学派ですので食べ歩く一杯一杯が勉強。今後この連載でたくさんのラーメンを作っていきますが、基本的に業務用や高価な食材は使用せずスーパーでも買える食材を使います。分量もいい意味適当で大丈夫。余ったぶんは優秀なスープストックとして、タレは何の料理にも使い回しが利くので家族に喜ばれます。因みに湯切りテボやレードル各種、寸胴などは自前で揃えています。皆さんも「大人の嗜み」を趣味として、ご家族やご友人に振る舞ってみては如何でしょう?自作派の仲間が増えたら嬉しいなという企みも加えてお伝えしてみます。
さて本連載『MUSIC&RAMEN』の本題に入ります。
この連載ではひとつテーマを決めてラーメンをつくり、そのテーマに合う音楽をご紹介します。最初のテーマは「王道」。基本に忠実ながらも食材を吟味、重層な味わいを目指す「醤油らぁ麺」を作りました。
「王道ラーメン」と言われて想起されるような、鶏ガラにクズ野菜で出汁を取るような昔のシンプルなラーメンは「ポツン」と取り残されたような古い町中華のみにフレームを残すだけ。現在の専門店のそれは似たようなルックスを纏っていても、音楽同様中身は驚くほどハイブリッドに変貌を遂げ、更にリロードは続いているのです。
僕の音楽のベースにはロックやジャズ、ソウルやヒップホップがありますが、その音楽も様々なブレンドを経てドラスティックな変化や価値の逆転を遂げています。例えばA.O.R.(アダルト・オリエンテッド・ロック)というアメリカを席巻したアーバンなジャンル名は今でこそ耳にしませんが、日本ではCITY POPと名を変えZ世代にさえ人気がありますね。その源流は間違いなくA.O.R.やソウルです。
王道をリストアップするのは簡単ですが、少し角度を変え当時は評価が低かったものの様々なシーンを経て評価を獲得し浮上した楽曲を選んでみました。先ずはこの辺から始めてみませんか?
※プレイリストの再生にはSpotifyのアカウントが必要です。
中華麺 | 2玉(中細面) |
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★ 魚介出汁 | |
・ 水 | 4リットル(多めに作っておき残った出汁はストック用←冷凍可能) |
・ 桜エビ煮干し | 5g |
・ 干し椎茸 | 5g |
・ 昆布 | 合わせて10g(利尻昆布、真昆布) |
・ 鰹厚削り節 | 50g |
・ 混合節 | 25g |
・ 干し貝柱 | 10g |
・ アゴ出汁 | 2パック(追い出汁) |
★ 鶏だし | |
・ 水 | 2リットル |
・ 鶏手羽 | 1キロ |
・ 玉ねぎ | 中1個 |
・ 長ねぎ | 適量(青い部分) |
・ にんにく | 2片 |
・ 生姜 | 3片 |
★ 醤油だれ | (つくりやすい分量) |
・ 醤油 | 500cc |
・ みりん | 100cc |
・ ザラメ | 30g |
・ 昆布 | 5g |
・ 梅干し | 2個 |
★ 香味油 | |
・ グレープシードオイル | 適量 |
・ エシャレット | 1/2個 |
・ 鶏油 | 適量 |
★ 鶏チャーシュー※ | |
・ 鶏むね肉 | 1枚 |
・ グレープシードオイル | 適量 |
・ にんにく | 小さじ1/2(チューブ) |
・ 塩 | 少々 |
味玉 | 2個 |
三つ葉 | 適量(薬味はお好みで、ざく切り) |
九条ねぎ | 適量(薬味はお好みで) |
※余った分はストックして「よだれ鶏」などに!
醤油だれの材料を鍋に入れ、弱火にかける。60℃くらいをキープしながら一時間温める。一時間たったら、漉して冷ます。
水4リットルに魚介出汁の材料を入れ、前日から一晩水出ししておきストックとする。つくる際にはそのストックから適量(2人分を作る場合目減り分を考慮し約1リットルを使用)ふつふつと材料が踊る程度の温度で軽く煮出す。
鶏手羽はだしが良く出るように、包丁で骨をたたき割る。
鍋に鶏だしの材料を入れ、2リットル(分量外)の水を加える。一旦強火で一気に沸騰させ、出てきたアクを綺麗にとる。取り終えたら極弱火にして2時間煮込む。煮込んでいるうちにスープが目減りしますが当初の量の半分程度を目安に煮出す。過程で鶏手羽から出てくる脂(鶏油)は、適宜取り分けておく。
鶏チャーシューの材料を、耐熱の食品保存用袋にいれてなじませる。
鍋に水を入れ低温調理機を65℃にセットして、温まったら⑤をお湯につける。そのまま45分放置。低温調理機がない場合は、炊飯器に80℃程度のお湯を入れてから⑤を入れて、保温モードにして約1時間待つ。
②と④の出汁を漉したあと400ccずつ小鍋に移し、スープ用のだしをつくる。
エシャロットをみじん切りにする。グレープシードオイルと取り置いてあった鶏油をフライパンで低温で熱し、エシャロットを加え、焦げ色が付くまで炒める。ある程度、色が変わったら火を止めて余熱で炒めるのがコツ。
麺を表示よりも少し固めにゆでる。(市販の麺は伸びやすいため)ラーメンを盛る器はあらかじめ温めておく。
⑨の器に①(40cc)と④を入れて⑦を再度十分に温めて注ぎスープとする。そこに湯ぎりした麺を入れる。⑥のチャーシューと味玉、九条ねぎ、三つ葉を乗せて完成。薬味はお好みで構いません。
文:須永辰緒 写真:竹之内祐幸