荻野恭子さんの手づくり調味料レシピ
爽快な辛さと豊かな香りが魅力の"自家製柚子胡椒"

爽快な辛さと豊かな香りが魅力の"自家製柚子胡椒"

秋を象徴するものの一つが、柚子。爽やかな香りの青柚子は期間限定のお愉しみですが、柚子胡椒にすればいつでも楽しめます。料理研究家の荻野恭子さんから、日々役立つ調味料を習いました。

暑さが和らいでくると、むくむくとわき上がる食欲。

料理研究家・荻野恭子さん
料理研究家・荻野恭子さん

残暑のなかにも、少しずつ秋の足音が聞こえてきましたね。食事も、だんだんとこっくりとした味わいのものが恋しくなってきます。今回は、手づくりの柚子胡椒とXO醤をご紹介しましょう。柚子胡椒は、鍋物や麺類の薬味にするなど、市販品を常備している人も多いと思いますが、家で簡単につくることができるんですよ。
材料は青柚子と青唐辛子、塩。青柚子の皮をすりおろし、青唐辛子、塩と一緒にペーストにするだけ。家族で使う量ならフードプロセッサーなどを使わなくても、まな板の上で刻み合わせながらペーストにすれば大丈夫。これを冬に黄色く熟した柚子と赤唐辛子でつくれば黄色い柚子胡椒に。季節ごとに手に入る材料で少しずつつくると、風味の変化が楽しめます。
そのまま薬味として料理に添えるのはもちろん、炒め物や焼き物、揚げ物の下味や調味料としても万能。ほかの調味料を多用しなくても、程よい塩気に爽快な辛さと香りが、主役の肉や魚の味わいをシンプルに引き立ててくれますよ。
XO醤も、私が何十年とつくり続けているお気に入りの調味料の一つ。若い頃に通っていた中国料理の教室で教わり、その後、おさらいのために発祥の地である香港のペニンシュラホテルでもレッスンを受けたの。ここでは本場のレシピを基に、日本でつくりやすい形にアレンジしています。
材料を見てわかる通り、干し貝柱や干し海老、生ハム(本場では金華ハム)など、贅沢な食材をふんだんに使うのが特徴。いったい、どんなふうにつくるの?と思うけれど、乾物を戻して炒め合わせていくだけだから、材料さえ揃えたら思いのほか簡単なの。
それぞれ単品でも旨味が凝縮したものばかりだから、それを組み合わせたらおいしいに決まっているわよね。スプーン一杯で料理に重層的な旨味が加わるので、卵と混ぜてスクランブルエッグにするだけでもごちそうに。餃子や包子(パオズ)などの肉餡に入れるのもお薦めですよ。生地もぜひ、自家製でね。気持ちのよい秋晴れの一日、調味料づくりの時間を、気負わずゆったりと楽しんでください。

“自家製柚子胡椒”のつくり方

材料材料 (出来上がり約150ml分)

青柚子500g(約10個)
青唐辛子50g(約10本)
30g

1青柚子をすりおろす

青柚子は表面の青い皮をすりおろす。白いワタの部分が少し混ざっても構わないが、苦味が強くなる。

青柚子をすりおろす

2果汁を絞る

①で皮をすりおろした後の実を半分に切り、果汁を搾っておく。

果汁を絞る

3青唐辛子をみじん切りにする

青唐辛子は種を取り、みじん切りにする。刺激が強いので皮膚が弱い人は調理用のゴム手袋をして作業を。

青唐辛子をみじん切りにする

4ペースト状にする

③の青唐辛子に①の柚子の皮と塩をのせ、包丁で混ぜながらさらに刻み、ペースト状にしていく。

ペースト状にする

5果汁を加える

途中、②で搾った柚子果汁を大さじ1程度加えて固さを調整。果汁を混ぜることでとがった味わいがマイルドになり、より熟成も進むようになる。

果汁を加える

6瓶に詰める

煮沸消毒した保存瓶に詰める。すぐに使えるが、熟成させると塩のカドが取れて丸い味わいになってくる。使うたびに底から混ぜ、保存は冷蔵庫で3カ月ほど。

瓶に詰める
残った柚子果汁を柚子果汁と同量の醤油、みりんを混ぜ合わせれば、自家製ポン酢の出来上がり。幽庵焼きの下味や鍋物などに。
完成

教える人

料理研究家 荻野恭子

料理研究家 荻野恭子

料理研究家。世界中を旅しながら現地の家庭やレストランで料理を習い、食文化を研究するのがライフワーク。これまでに訪れた国は65カ国以上。特に“塩”は長年追いかけ続けているテーマの一つで、近著に『塩ひとつまみ それだけでおいしく』(女子栄養大学出版部)がある。ほかに『手づくり調味料のある暮らし』(暮しの手帖社)など著書多数。自宅で料理教室「サロン・ド・キュイジーヌ」を主宰。

※この記事の内容は、『四季dancyu 2022秋』に掲載したものです。

四季dancyu 2022秋
四季dancyu 2022秋
いつもの食卓をちょっと格上げ

A4変型判(120頁)
ISBN:9784833481502
2022年9月12日発売/1,100円(税込)

文:鹿野真砂美 撮影:伊藤徹也

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。