なすはおつまみに人気の野菜ですが、ワンパターンになりがち。シンプルだけど、なすならではの美味しさとトロッとした食感が楽しめるのがこの生姜なす。焼きなすとも蒸しなすとも違う、新しい味わいが楽しめます。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。
野菜は単体でいただくと素材そのものの美味しさが楽しめる上、いろいろなアレンジができます。今回は本当に簡単で、焼きなすの材料とほぼ同じです。でも、食べた印象は違い、濃厚でトロトロなんです。
なすは皮、果肉ともしっかりしていて、よく炒めてもなかなか中まで味がしみにくい野菜です。とくに夏場の皮が硬いなすは、皮に細かく切り目を入れ、皮を下にして焼きます。ここまでは通常のなす炒めと同じですが、全体がこんがりと焼けたら、醤油をかけて菜箸で裂いてからめます。
裂くと表面積が増えて断面から味がよくしみ、なすがトロトロになるんです。コツはこれだけですが、油をよく吸うので焼いている途中に足りないなと思ったら、胡麻油を加えてください。冷めても美味しいので、たくさんつくって常備菜にしてもいいですよ。
お酒はビールと思われがちですが、からめた醤油の香ばしさが赤ワインとピッタリ。それも濃いめの赤が好相性です。
なす | 2本(約200g) |
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濃口醤油 | 大さじ1 |
おろし生姜 | 適量 |
胡麻油 | 大さじ1 |
なすはヘタを落として縦半分に切って、皮に細かく切り目を入れる。水に5分ほどさらして水気を拭く。
フライパンに胡麻油を入れて中火にかけ、①を皮を下にして入れ、全体をこんがりと焼く。途中、油が足りなくなったら、胡麻油大さじ1~2程度足すとよい。
なすがしんなりと焼けたら醤油を入れ、箸で裂いてからめ、火を止める。
器に盛り、生姜をのせる。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ