個性の強い紫キャベツを美味しく食べるための、辻さん流サラダのご紹介。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
紫キャベツというものは、とかく、色物扱いされがちで、どこかつねにわき役的扱いを受け、サラダに入れられる時などは味よりも、とくに色彩だけを重視されている。キャベツなのに、可哀想だ、と同情したくなる野菜なのである。こういうものをほうっておけない性格なので、いろいろと世界各地を放浪しながら、紫キャベツの存在理由についてぼくは調査し、考察してきた。
しかし、この紫色のキャベツは、普通のキャベツより苦味があるし、しかも、ちょっと硬くて食べにくいのも事実だ。その上、あの色だから煮たりすると毒々しいパープルカラーが他の食べ物に付着して、大変なことになる。敬遠されがちだけれど、ぼくはその個性をなんとかしたい、と思うのだった。人間にもいろいろな人間がいるけれど、どの人にも個性というものがある。癖のある人ほどぼくは気になる。紫キャベツとはそういう野菜ではないだろうか?
ぼくとほぼ同じ年の歌手に「プリンス」がいる。彼の曲「パープル・レイン」はあの毒々しさがいい。紫の雨、そうだ、そういうサラダを作ったらどうなるだろう。この紫キャベツを使ったサラダはまさに、プリンスの「パープル・レイン」をモチーフにしたサラダということが出来る。ぼくはこの毒々しさの色の中に酸味とシャキシャキの食感を加えた。青リンゴも、普通のリンゴに比べやや敬遠されがちだけれど、あの独特の酸味は個性豊かで、このサラダの一角を担ってもらうのに最適であった。香ばしさがほしい。そこでナッツ系を入れようと思った。ピーナッツなどでもよかったが煎ったくるみのあの次元大介のようなサブキャラクターが必要だった。こうして生まれた歌手プリンスをオマージュするサラダ、題して「サラダ・パープル・レイン」の登場とあいなった。
このサラダは、酸っぱい苦みと食感が命なのである。非常にヘルシーであり、病みつきになる。あの色物だった紫キャベツが主役となった非常に珍しいサラダ。健康を気遣うあなたに、ぜひ、おすすめしたい。
では、一緒に作ってみましょう!!!
紫キャベツ | 1/4個(小) |
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青りんご | 1/8個 |
くるみ | 適量 |
★ ドレッシング | |
・ シードル酢 | 小さじ2 |
・ マスタード | 小さじ2 |
・ レモン | 1/2個 |
・ オリーブオイル | 大さじ2 |
・ 塩 | 適宜 |
・ 胡椒 | 適宜 |
紫キャベツをスライサーでスライスし、青りんごは細めに切っておく(りんごはスライサーを使わないほうがシャキシャキ感が出ます)。
くるみはフライパンなどで炒っておく。
ボウルに、ドレッシングの材料をすべて入れ、よく混ぜる。
③にキャベツと青りんご、くるみ(最後に飾る分を残して細かく砕く)を入れ、よく混ぜる。
お皿に盛って、最後にくるみを飾ったら完成。
お肉などの付け合わせにも、ヘルシーで最適なのである。ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac