パリでは人気の食材を使った、たまらない美味しさのサラダをご紹介。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
今日はパリのお父ちゃんが、めっちゃ昨今ハマっているサラダをご紹介いたします。 アーティチョークには実は2種類あり、フランス人が好んで食べるのは大きくてぽってりとした緑色のもの。ゆでて花びらのようなところを剥がして、根本の部分にビネグレットをつけて食べます。ほくほくした食感でほんのりした甘味があります。ところが、今回使用したのは、イタリア産の紫色で小ぶりな方。こちらは中心部のみを頂きます。食感はたけのこのような感じ、よりソリッドで繊細。ほんのり苦味があってクセになる味なのです。そんな旬のアーティチョークをカルパッチョで食べるのが、イタリア人のいきな食べ方になります。ぼくも大好き!
それとイタリアのブレザオラを組み合わせるのです。塩漬けされた、簡単に言ってしまうと生ハムの一種なのですが、馬肉、牛肉、鹿肉など様々なブレザオラがあります。しかし、まあ、牛肉のブレザオラがもっともポピュラーでしょうね。薄く切ると赤いのです。塩漬けされているので、ワインとも抜群にあいますが、実は、このアーティチョークとの相性が信じられないほど最高なのですよ、ほっほっほ。
6区にあるパリの歴史的デパート、ボンマルシェの上階にあるイタリア人経営のイタリアン「プリモ・ピアノ」でぼくはよく食べるのですが、美味しいを通り越しますね。レモンやオリーブオイルを素直に受け入れるアーティチョークならではの奥行き。口腔にやや癖のある甘味や渋みを広げるのです。そこにブレザオラの肉々しい赤い食感とでもいうのか、ねとっとした肉の味わいが混ざって、ひゃあ、これにドライな白ワイン、もう、たまりません!
この食感と味わいは日本の人はほぼ経験がないと思います。ぜひ、試してもらいたい。アーティチョークとブレザオラ、いったい、誰が思い付いたのでしょうね。
では、さっそく、一緒に作ってみましょう!!
アーティチョーク | 3個 |
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ルッコラ | ひとつかみ |
レモン | 1/2個(レモン水用) |
レモン汁 | 大さじ1/2 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
パルメザンチーズ | 適量(あれば塊) |
塩 | 適量 |
黒胡椒 | 適量 |
ブレザオラ | 適量 |
ボウルに水を張りレモンをぎゅっと搾り、皮ごと入れておく。
イタリア産の小さなアーティチョークを使う。花びらのような部分をむき、芯にたどり着いたら茎の部分の皮を包丁で厚めにむき、茎を縦に切って、半分にし、中のふわふわした部分を取り除く。
②をレモン水の中に入れる。重要な注意点は、アーティチョークはアクが強いので、レモン水に浸さないとすぐに真っ黒になってしまうことです。
スライサーもしくは包丁で薄切りにし、ルッコラとともにボウルに入れ、レモン汁とオリーブオイル、塩でマリネする。
お皿にブレザオラを並べ、ルッコラとアーティチョークのマリネを軽く混ぜ、その上に盛り、パルメザンチーズをたっぷりかけ、胡椒をガリガリしたら完成。
最後にオリーブオイル(分量外)を回しかけ、召し上がれ。ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac