トップシェフとして国内外で活躍する杉浦仁志シェフ。日本におけるヴィーガンやプラントベースフード調理の第一人者でもあり、2019年に日本で開催された“Vegan Award”では初の料理人賞に輝くなど、国内外で開催されるヴィーガン関連のチャレンジで多数の受賞歴をもつ実力者である。そんな杉浦シェフが、植物性原料だけで“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創りだした食用油脂「botanova」と出合ったら……どんな化学反応を起こすのだろうか。シリーズ第2回も興味津々のスタートである。
*プラントベースフード=植物由来の原材料を使ってつくる食品の総称。
アメリカでは、料理界のアカデミー賞といわれる「ジェームス・ビアード賞」受賞シェフの、ジョアキム・スプリチャル氏の下で学んだ杉浦シェフ。彼にアドバイスされたことが「料理を覚えるより前に社会性を学べ」だった。「アメリカは多民族国家ですから、各国の食の知識をある程度は知っておく必要がありました。ヴィーガンやハラールは、食の多様性を学ぶ中で出合った食文化です」と杉浦シェフ。
そして、日本との違いを痛感したことが、ベジタリアンに対するレストランの対応だった。「多くのレストランにはベジタリアンメニューがあります。野菜をよりおいしく食べるための料理です。肉や魚を抜くだけだったり、植物性の何かに代替する料理ではありません。ベジタリアン料理が食文化として社会に浸透していることに驚かされました」。
そうして食文化の知識を得る中、杉浦シェフがたどり着いた考え方の一つが、プラントベースだったという。
杉浦シェフは最後に、プラントベースは魅力と可能性に満ちている、と結んだのだった。
ミヨシ油脂もまた、食の多様化、健康や環境への意識の高まりを受け、プラントベースの油脂「botanova」を開発。“バター風味”“ラード風味”“牛脂風味”があり、たとえば“ラード風味”は、ラードの香ばしさを再現。野菜や米麹発酵物などさまざまな素材の風味を香味油に移し、動物油脂がもつ厚みのある味わい、旨味、芳醇な香りを創りだす。料理に少量加えるだけで、炒め風味や加熱調理の味が加わるという。
杉浦シェフが「botanova」でつくる料理として選んだのは、名づけて「Mushroom Paradiso(マッシュルーム・パラディーゾ)和名“きのこの楽園”」。英語とイタリア語を組み合わせているのも、杉浦シェフの多様な食へのリスペクトが込められている。
「私のシグネチャーメニューの一つです。というのも、種類はさまざまですが、きのこは世界中のどこにでもある多様性に富んだ食材です。そして複雑な旨味があり、食感もいい。さらに、健康に寄与する栄養素も豊富です。なので、世界中で披露することができます」。
杉浦シェフがプラントベースフードの調理で使う油は、もっぱらこめ油が多い。その理由は、クセのなさ。食材の繊細な滋味を引き出すのに適しているという。
「でも、料理には、動物性食材なしでは、料理人がどんなに頑張っても出せない風味や旨味があるんです。botanovaを使うと、料理に重ねたかった風味や旨味を手軽に補えます。ちょっと悔しいですね(笑)。味わいに奥行きが加わり、満足度の高いおいしさにまとまります」。
杉浦シェフは、こめ油での調理中にプラスするスタイルで「botanova」を使用。加熱時間を短くして、「botanova」の風味をより活かすアイデアを披露してくれた。
大いなる可能性を見出してくれた杉浦シェフは、「botanova」にエールを送ってくれたのだった。
・「botanova」3種はすべてNPO法人ベジプロジェクトジャパンのヴィーガン認証を取得。※同じ製造設備で動物性原料を含む製品も製造しています。
・「botanova」はRSPO(マスバランス)認証製品です。RSPO(マスバランス)認証製品は、持続可能なパーム油の生産に貢献しています。
●きのこのデュクセル | つくりやすい分量 |
---|---|
A | |
・ 舞茸 | 50g(みじん切り) |
・ 平茸 | 50g(みじん切り) |
・ ブラウンマッシュルーム | 50g(みじん切り) |
・ 燻製大豆ミート | 25g(ミンチタイプ) |
・ アーモンド | 15g(みじん切り) |
・ クルミ | 10g(みじん切り) |
・ たもぎ茸パウダー | 少々 |
こめ油 | 30ml |
にんにく | 1片(皮ごと、つぶす) |
botanova 植物のおいしさ ラード風味 | 15g |
醤油 | 少々 |
タイムの葉 | 少々 |
●ラード風味のマッシュポテト | つくりやすい分量(※1) |
じゃがいも | 100g(メークイン) |
B | |
・ にんにくピューレ | 15g(ゆでてつぶしたもの) |
・ 塩 | 少々 |
・ botanova 植物のおいしさ ラード風味 | 15g |
●さつまいものチュイル | つくりやすい分量 |
C | |
・ さつまいも | 100g |
・ botanova 植物のおいしさ バター風味 | 3g |
・ 片栗粉 | 適量 |
こめ油 | 300ml |
botanova 植物のおいしさ 牛脂風味 | 30g |
●仕上げ | |
ブラウンマッシュルーム | 1個(大きめのもの) |
きのこのデュクセル | 20~30g |
ラード風味のマッシュポテト | 5g |
塩 | 少々 |
スプラウト | 少々(マイクロリーフミックス) |
あしらい用のラード風味のマッシュポテト | 30g |
さつまいものチュイル | 1個 |
トリュフオイル | 少々 |
えのき茸ソース | 20ml(※2) |
※1 あれば、紫色のじゃがいも(シャドークイーン)のマッシュポテトも用意する。材料は同量でOK。
※2 えのき茸ソースのつくり方(つくりやすい分量)/水600mlに乾燥えのき茸150g、たもぎ茸パウダー少々を入れ、一晩つける。鍋に入れて弱火にかけ、100mlになるまで煮詰める。えのき茸は取り除く。
フライパンにこめ油とにんにくを入れて弱火にかける。香りが立ってきたらAを入れ、香ばしく炒める。水分がとんだらbotanova“ラード風味”を加えて軽く炒め合わせ、醤油、タイムの葉を加えて調味する。にんにくは取り除く。
じゃがいも(メークイン)は皮つきのまま蒸す。竹串がすーっと通るようになったら皮をむき、裏漉しする。熱いうちに、Bを混ぜ合わせる。
さつまいもは柔らかく蒸し、皮をむく。Cをミキサーで撹拌し、好みの型に流し入れて30分ほど冷凍する。
小鍋にこめ油を入れて130℃に熱し、さつまいものチュイルを凍ったまま入れて揚げる。チュイルが色づき始めたらbotanova“牛脂風味”を加え、香りをつけながらこんがり揚げる。
ブラウンマッシュルームの軸をくりぬき、ミディアムレアに蒸す。この軸は予め抜いておき、みじん切りにしてデュクセルに加えるとよい。
蒸したマッシュルームをひっくり返してきのこのデュクセル10gを詰め、ラード風味のマッシュポテトを蓋をするように塗り込む。塩をふり、スプラウトをこんもりのせる。
ラード風味のマッシュポテト(あれば紫色のじゃがいも)を皿にあしらい、中央に残りのきのこのデュクセルをこんもり盛る。その上に、4をのせ、さつまいものチュイルを飾る。ゲストの前で、トリュフオイルをふり、えのき茸ソースを回しかける。
ONODERA GROUPエグゼクティブシェフ。1976年、大阪府生まれ。2009年に渡米し、感性と技術を磨く。2014年と2015年、ニューヨークで開催された国連日本代表団レセプションパーティーで日本代表シェフを務めた。日本のヴィーガン・プラントベース調理の第一人者として国内外で活躍しながら、食を通じた社会貢献として「ソーシャル・フード・ガストロノミー」を提唱。世界的な地球環境の悪化が懸念される“2050年問題”に向け、食糧危機などを乗り切るシェフモデルとしても注目される。
文:斉藤由利子 写真:森本真哉