辻さんが友人から教わったという、ペルーの温かいサラダをご紹介します。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
さて、今日はペルーの代表的なサラダ?いや、料理というべきか、パパ・ア・ラ・ワンカイーナ(じゃがいものワンカイーナ風)をご紹介いたします。ちょっと生温かいじゃがいものチーズソースのサラダという感じ。「パパ」とありますが、お父さんの意味ではなく、じゃがいも、のことです。
この料理を教えてくれたのは、ペルー人のミゲルさん。彼はリッツホテルのシェフでした。今は子育てに奮闘する心優しきパリジャンです。そんなミゲルのお父さんが、ミゲルが幼かった頃によく作ってくれたのがこのパパ・ア・ラ・ワンカイーナだったということで、「パパ」が彼にとっては「じゃがいも」ではなく「お父さん」だったのですね。簡単だし、大胆なサラダなので、お父さんが週末に作るのに最適かもしれません。ミゲル少年は、パパのサラダ、と親しみを込めて呼んでおりました。
クラッカーを使ったり、いろいろと突っ込みどころ満載なサラダですが、興味深いところは、生温かい茹でじゃがいものチーズソースのサラダ、という点です。冷たくないところが実にペルーな感じ。
ペルーといえば、セビーチェ(魚介のマリネ)を思い出しますけれど、どこか日本にも通じる独特の味わいを持っていますよね。スペインのサンセバスチャンを旅した時も、ペルー人がやっている和食屋があっておいしかったし、フランスにもペルー×ジャポネ(日本人)という寿司のチェーン店があったり、なぜかペルー人が寿司を握ることが多いのです。
ミゲルもリッツで和食担当だったといいますし、セビーチェを食べると和のテイストを感じるのはぼくだけではないはず。日本とペルー、意外と共通点があるのです。ミゲルに「フジモリ元大統領は好きですか?」と訊いてみたところ、まあまあ、という意見でした。「でも、日本人のことはみんな大好きだよ」と笑っていました。
そんなペルー人お父さんのサラダを今日は一緒に作ってみましょうか。
じゃがいも | 3個(メークインなど硬めのもの) |
---|---|
ゆで卵 | 1個 |
ブラックオリーブ | 4個 |
コリアンダー | 適量 |
A | |
・ フェタチーズ | 30g |
・ クラッカー | 2~3枚 |
・ アヒ・アマリージョペースト | 大さじ1(なければ、唐辛子の酢漬けなどで代用) |
・ 牛乳 | 50ml |
・ オリーブオイル | 20ml |
・ にんにく | 1/2片 |
・ 塩 | 適宜 |
じゃがいもは皮をむき、太めの輪切りにしてゆでる。ゆで卵はざく切りに、ブラックオリーブも5mm幅の輪切りにする。
Aの材料をすべてボウルに入れ、ハンドブレンダーでガガガッとなめらかにし、最後に塩で味を調える。材料のアヒ(唐辛子)・アマリージョ(黄色)とは、ペルーの黄色い唐辛子のことで、ペルー料理にはこのアヒ・アマリージョのペーストが欠かせない(近所のスーパーには売ってなかったので赤唐辛子の酢漬けで代用しました。アヒ・アマリージョのペーストは南米系の食材店や輸入食材店などで販売されているようです)。
じゃがいもがゆで上がったらお皿に並べ、ソースをたっぷりかけ、ゆで卵とオリーブをのせ、コリアンダーを少し散らして召し上がれ。
ペルーではコリアンダーをいっぱい使うらしい。食べたことのない、ペルーの味をぜひ、ご家庭で……。
ボナペティ!!!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac