メニューにあるとついつい頼んでしまう、こんにゃく料理。おつまみや箸休めになる、ホッとする一品です。板こんにゃく、糸こんにゃくが一般的ですが、今回は山形の郷土料理でもある玉こんにゃくを使ったあてをご紹介。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。
地味だけど独特の風味と食感がクセになる、こんにゃく。今回使った玉こんにゃくは、山形県発祥の球状のこんにゃくで、弾力があって歯ごたえがあるのが特徴です。こんにゃくはピリ辛や甘辛の味つけにすることが多いですが、この玉こんにゃくはいしると水だけで煮る醤油味。それを串に刺しています。いしるはガツンとした旨味や独特の風味がある魚醤で、自然なコクでこんにゃくを引き立ててくれます。
こんにゃくのアク抜きは、塩もみや下ゆでするという方法もありますが、私のお薦めは砂糖もみ。砂糖をもみ込んで2〜3分置くと、浸透圧で匂いやアクが取れ、塩もみよりもあたりがやわらかく、下ゆでするより簡単なんです。この過程で、こんにゃくの余分な水分が抜け、味のしみ込みがよくなるというメリットもあります。
こんにゃくをプリッとなるまでいしるで煮、残った煮汁で牛肉を煮たら出来上がりです。こんにゃくと牛肉は旨味を引き出し合う抜群のコンビ。ポイントは牛肉の煮加減で、煮すぎると硬くなるので、さっと煮ます。お薦めのお酒は芋焼酎。今の季節ならお湯割りがぴったりです。
玉こんにゃく | 1袋(280g) |
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A | |
・ 水 | 200ml |
・ いしる | 大さじ1 |
牛こま切れ肉 | 50g |
青ねぎ | 適量 |
練りがらし | 少々 |
こんにゃくはさっと洗ってボウルに砂糖大さじ1(分量外)とともに入れて手でもみ、2~3分ほど置いてから、軽く洗って水気をきる。
①を小鍋に入れてAを加え、蓋を少しずらして中火にかけ、沸いたら弱火で20分ほど煮る。火を止め、こんにゃくを取り出し、串に刺す。
②の鍋に残った煮汁を沸かし、牛肉を加えてさっと火を通す。
②の串に刺したこんにゃくと③を器に盛り合わせ、小口切りにした青ねぎと練りがらしを添える。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ