レバーは好き嫌いが分かれる食材。そして、下処理や取り扱いが面倒と思われがちです。でも、さっと煮ただけなのにクセがなくて美味しい!と太鼓判の一品がこの山椒煮。中まで火がしっかり通っているのにふんわり食感で、味がよくからんでおかずにもつまみにもなります。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。
レバーの中でも鶏レバーは最も鉄分が多い、女性の味方の食材です。取り扱いが面倒と思う方もいらっしゃいますが、醤油、オイスターソース、味醂、実山椒と片栗粉を合わせたたれの中で煮るだけ。ただ、中まで火が入っているかどうかが心配だし、かといって火が入りすぎると硬くて美味しくないですよね。
この山椒煮は中まで火が通っているのにふんわりとして、トロッとしたたれをからめながらいただくと本当に美味しいんです。新鮮な鶏肝を使い、洗って血を取り除き、合わせだれの中で煮ていきます。ポイントは火入れの仕方。混ぜながらゆっくり火を通し、九割方火が通ったところで火を止め、あとは、蓋をして余熱で5分。これで完成です。こうするとふっくらと仕上がり、たれは程よくとろとろで、しっかりレバーにからみます。
ここではフライパンでつくりましたが、慣れない方は深鍋を使うとつくりやすいです。鶏肝の様子を見ながら火を通し、火を止めるタイミングは表面の赤みがなくなり、少し硬くなったとき。ヘラで混ぜているとブルブルしていたレバーが締まっていくのがわかります。
お酒はシェリーのアモンティリャードを選びました。私はシェリーはワインというより紹興酒の感覚で楽しんでいて、醤油を効かせた山椒だれとシェリーのコクがとてもよく合うんです。
鶏レバー | 200g |
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A | |
・ 味醂 | 大さじ2 |
・ 醤油 | 大さじ2 |
・ 実山椒 | 小さじ1(水煮) |
・ 片栗粉 | 小さじ1 |
・ オイスターソース | 小さじ1 |
溶きがらし | 少々 |
鶏レバーは流水で血の部分を洗い流し、筋を取りながらひと口大に切る。
フライパンにAと①の鶏レバーを加え、弱めの中火にかける。全体に調味料がトロッとからむようにヘラで絶えず混ぜながら3分ほどかけて八割方鶏レバーに火を通す。焦げそうな場合は火を弱める。
火を止め、蓋をして5分以上置いて余熱で火を通す。器に盛り、溶きがらしを添える(冷蔵で3日間保存可能)。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ