現在パリで大流行中だというポケ・サラダ。ハワイでよく見かけるものとは少し違うようで……。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
大学生になった息子が一人暮らしを始めるようになり、学生街で一番食べているというのが、今日、ご紹介する「ポケ・ボウル」なのである。彼だけじゃなく、最近の若い女性を中心に、健康志向の大学生や会社員なども巻き込み、ポケ・ボウルの人気たるや、凄まじい。
ポケ・ボウルとは日本人にもなじみのあるハワイの料理。ポキ・ボウルともいう。ポキというのは「切り身」を指すのだそうで、ボウルは丼だから、ハワイ風「切り身丼」ということになる。ぼくも日本に住んでいた頃、ハワイ旅行をする度、よく食べていた。
ハワイの切り身丼は、どこか懐かしくて、どこか新しくて、酢飯じゃないし、斬新だった。それがフランスにたどり着いて、ちょっと変化した。中身はほとんど一緒で、マグロより圧倒的にサーモンが主流となった。魚を入れないで、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)をのせ、「ビーガン・ボウル」と呼んで出しているカフェなどもある。ともかく、野菜と切り身とごはんという組み合わせがポケ・ボウルのフランスにおけるはじまりであった。それが今ではサラダとしても定着しつつある。ごはんの代わりに「キノア」など栄養価の高い穀物をボウルの底に敷き詰め、どちらかというと野菜メインの一皿に変化した。必ず入っているのは、なぜか、枝豆、にんじん(シリシリ)、アボカド、である。
現在、パリではこのポケ・ボウル専門店が大ヒット中、コロナ禍でウーバーイーツなどのデリバリーシステムが整備され、そこに健康志向が重なって、ポケ人気が大爆発、押しも押されもせぬ人気料理へと急成長を遂げてしまった。ぼくも息子ほどではないが、よく食べる。ぼくはサラダとして、カフェで注文をすることが多い。
そこで今回は、切り身丼のようなポケ・ボウルではなく、野菜サラダとして食べることが出来る「ポケ・ボウル・サラダ」を一緒に創作してみたい。パリで流行りのキノア入りのポケ・ボウル・サラダは実に健康的な一皿と言えるだろう。一人暮らしのぼくのような人間には心強い栄養の味方でもある。しかも、めっちゃ美味いのだ。
サーモン | 約100g |
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キノア | 約1カップ |
アボカド | 1/2個(種を取って薄切り) |
枝豆 | 適量 |
にんじん | 1/2本 |
紫玉ねぎ | 1/4個 |
ミニトマト | 10個 |
きゅうり | 1/2本 |
ラディッシュ | 4個 |
レモン汁 | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
炒り黒胡麻 | 適量 |
塩 | 適量 |
にんじんは千切りにして塩もみし、数分置いて水分を絞ったら、レモン汁とオリーブオイルを回しかけておく(これをシリシリサラダという)。
ミニトマト、きゅうり、ラディッシュはお好きなサイズ、出来ればサイコロカットのように形を揃えておくとかわいらしい。枝豆はゆでて、さやから出しておく。紫玉ねぎは薄切りに、キノアは戻しておく。野菜は、お好みで増やしたり、減らしたりしてみてください。
ボウルを用意し、底にキノアを敷き詰める。中心にアボカドを配置する。このアボカドの位置がこの料理をゴージャスに見せるコツかもしれない。スライスして、ちょっと角度をつけ、キノアが敷き詰められた深皿の中心に置く。
色とりどりの野菜とサーモンの切り身を配置し、完成となる。サーモンの上には市販の甘だれをかけ、胡麻をふりかけることもお忘れなく。最後に、野菜全体にオリーブオイルを回しかけ、お好みでフルール・ド・セルをふっておく。
シンプルな料理だけれど、これを混ぜ合わせながら食べると、びっくりするほどにデリッシュ―!ハワイからパリにやってきた「ポケ・ボウル・サラダ」。まだまだ、その進化は止まらない。
ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac