フレンチトーストの甘味と生ハムの塩気が調和した、大人のデザートです。ホワイトラムの香りが加わることで、爽快感も生まれます。器と料理の組み合わせを提案する店「カモシカ」を主宰するオカズデザインさんに、器の紹介と、その器を引き立たせる、目にも舌にもおいしいレシピを教わりました。
温かな手ざわりやナチュラルな質感、軽やかな佇まいなど、木の器には“木”という素材にしか出せない魅力があります。なにより、「器が育っていくところ」に最大の魅力を感じているという〈オカズデザイン〉。使い込むほどに風合いが増す木の器は、料理人にとって使いがいを感じるもののようです。
「陶磁器やガラスの器に比べて、木の器は扱いにくいと感じている人が多いみたい。特に木肌を生かしたものは、料理の油や色がしみ込んでしまうのが心配という声をよく聞きます。でも私たちにとっては、それこそが面白さ。器と料理の組み合わせを提案している〈カモシカ〉で木の器を販売するときは、じゃんじゃん油物をのせてください、と伝えています。10年ほど使い込んだものを見せると、新品との風合いの違いにみんな驚いて、育てたいという気持ちになるようです」
桜やくるみ、オリーブ、栗など、木の種類によって色や風合いが異なることも魅力。また、子供用に選ばれることが多いのは、軽くて割れにくいからだけでなく、口当たりがやさしいからこそ。
「いつも汁物に使っている漆のお椀にご飯をよそってみると、口当たりのやさしさが顕著に感じられるかもしれません。ほっとするような肌なじみのよさ、それが木の器にはあるんですね」
手入れのコツはといえば、きちんと乾かしてからしまうこと。強い洗剤や傷がつくたわしなどは使わず、やさしく洗うこと。食器洗浄機や乾燥機、電子レンジ、オーブンはNGです。それさえ守れば、意外とカジュアルに使いやすいのが木の器。ぜひ、しまい込まずに日常に活躍させてくださいね。
トーストと木の器の相性は言わずもがな。焼きたての蒸気を木の器がほどよく吸収し、おいしさをキープしてくれるという効果があります。フレンチトーストも木の器だとよりおいしく感じるのは、べちゃつかず、バターの香ばしさやふんわりとした質感を生かしてくれるから。おいしくつくるポイントは、パンパンにふくらむまで一晩浸しておくこと。翌朝、じっくり時間をかけて焼き上げると、ふんわり幸せな食感に。角食でも山食でもいいし、カンパーニュやバゲットを使うのもおすすめです。
食パン | 2枚(厚さ2cm) |
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A | |
・ 牛乳 | 500ml |
・ 砂糖 | 60g |
・ 塩 | ひとつまみ |
ヨーグルト | 100g |
卵 | 3個(常温にもどす) |
卵黄 | 2個分 |
ホワイトラム | 大さじ1と1/2 |
バター | 大さじ1 |
生ハム | 適量 |
鍋にAを入れて火にかけ、沸騰したら火を止める。40℃まで温度が下が ったら、ボウルに入れたヨーグルトに少しずつ加えながらすり混ぜる。
別のボウルに卵と卵黄を入れ、泡立て器でよくほぐす。泡立たせず、すり混ぜること。1と合わせ、ザルなどでこし、ホワイトラムを加えて混ぜる。
ぴったり入るくらいの容器に食パンを入れ、そこに2を流し入れる。表面をラップで覆い、小皿などの軽い重しをのせる。冷蔵庫で一晩おく。
フライパンにバターを入れて中火にかけ、軽く汁気をきった3のパンを入れ、蓋をして弱火でこんがりと焼き色がつくまで焼き、裏に返す。
もう片面も焼き色がついたら器に盛り、生ハムをのせる。
2000年、吉岡秀治・吉岡知子が結成。“時間がおいしくしてくれるもの”をテーマに、書籍や広告のレシピ制作・器の開発・映画やドラマの料理監修などを手がけている。2008年より東京都杉並区にて、器と料理の店「カモシカ」を不定期でオープンし、作家の器の展示や季節の保存食の販売をはじめ、食にまつわる企画を開催。『二菜弁当』(成美堂出版)など著書多数。
この記事は技あり!「四季dancyu 春のレシピ」に掲載したものです。
文:藤井志織 写真:伊藤達也