暑い季節にさっぱりと飲める冷たいスープ。夏野菜をたっぷり使って、暑い時期の火照りや疲れた体を癒します。ガスパチョの世界は広くて、深い!今回はさまざまなガスパチョを、マドリード滞在歴14年の料理研究家、丸山久美さんに教えてもらいました。
最もポピュラーなスペイン料理のひとつ、ガスパチョ。誰もが「トマト味のスープ」だと認識しているだろうけれど、長らくスペインで料理を学んできた丸山久美さんによれば、その昔は、オリーブオイル、ワインビネガー、かたくなったパン、にんにく、塩だけでつくられた、粗末、といってもいい飲み物だったらしい。これを農作業の合間にサッとつくって喉を潤し、腹の足しにし、スタミナを補給していたという。原則としてこの5つの要素があれば、トマトがなくてもガスパチョなのだ。時代が下って、コロンブスの時代にトマトやピーマンなどがもたらされて、初めてこの素朴な飲み物に、生のままつぶしたり、ざくざく切ったものが加わるようになったのである。
新鮮な野菜の酵素や食物繊維を取り入れられるドリンク、すなわち“元祖スムージー”であり、さらにオイル、酢、にんにくがきいているとくれば、体にいいことずくめ。今では、フルーツ系などバリエーションも豊富だ。冷たいものが主流だが、温めて飲むガスパチョもある。
ガスパチョは、実に奥深いんである。
“ガスパチョ”といえば、何といっても、これ。トマトだけでなく、意外と野菜がたっぷり入っているので、栄養価も高い。冷蔵庫に常備して、食事に合わせたり、喉が渇いたときや、風呂上がりに、一杯。これをマスターすれば、あとはメインの素材を替えるだけ。ガスパチョの世界が無限に広がる……かも?
火を使わないから、簡単。基本のガスパチョをマスターしよう。
“Gazpacho andaluz(アンダルシアのガスパチョ)”。今では、アンダルシア地方だけでなく、世界中で愛されているスープだ。スペインでは、南部を中心に、夏の家庭に欠かせないばかりか、レストランやバルでは一年中、また、スーパーやガソリンスタンドではパックも売られているほど、シチュエーションや季節、あるいは時間帯を問わず広く飲まれている。
つくり方のコツは、攪拌するときに、まずオリーブオイルだけを入れて乳化させ、あとから塩とビネガーを加えてさらに攪拌すること。「一度に入れるより、おいしくなります」。シンプルな素材を使うので、素材の質が味を左右する。オリーブオイルもぜひ好みのものを探してみよう。
トマト | 500g(完熟) |
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きゅうり | 1本 |
玉ねぎ | 1/4個 |
ピーマン | 1個 |
にんにく | ごく少量(好みで) |
食パン | 1枚(6枚切り・耳なし) |
オリーブオイル | 大さじ3 |
白ワインビネガー | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1/2 |
トッピング | 適宜(トマト、きゅうり、玉ねぎ、ピーマン、パンなど) |
※記事中掲載のオリーブオイルは、すべてエキストラバージンオイルを使用。
パンはひたひたの水につけておく。
トマトはへたを取り除き、きゅうりは皮をむいて、それぞれざく切りにする。玉ねぎ、ピーマンは粗みじんに切る。にんにくはすりおろしておく。
2とにんにく、軽く絞った1のパンをミキサーまたはブレンダーでなめらかになるまで攪拌する。
オリーブオイルを加え攪拌する。さらにワインビネガーを加え混ぜ、塩で味をととのえる。
冷蔵庫で冷やす。
トッピングは小さい角切りにして添え、好みでのせる。好みでオリーブオイル(分量外)をふる。
ツアーコンダクターとして世界中を回った後、スペイン・マドリードで14年暮らす。2001年に帰国後は、スペインの家庭料理を中心に料理教室を主宰しながら雑誌やウェブでも活躍。著書も多数出版。
この記事は技ありdancyu!「スープ」に掲載したものです。
文と構成:風来 青 撮影:尾嶝 太