辻仁成の“パリ・サラダ”
辻 仁成の"パリ・サラダ"|第十八回"ブラータチーズのサラダ"

辻 仁成の"パリ・サラダ"|第十八回"ブラータチーズのサラダ"

ミシュラン星付きシェフのホームパーティーで食べた、つまみになるサラダのレシピです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。

天地がひっくりかえるほどに美味いサラダ

そこは田舎のお屋敷で、築200年、5ヘクタールもある牧草地の中ほどに屹立していた。その日、ミシュラン星付きシェフ、チャールズ宅で行われたホームパーティにぼくはゲストとして招かれていた。太陽の光が降り注ぐ庭の高木の袂、木のテーブルに並んだいくつかのおつまみの中に、今日ご紹介する「ブラータチーズのサラダ」があった。

ブラータとはイタリア語で「バターのような」という意味。モッツアレラチーズに、とっても濃厚なクリームが混ぜ込まれている、フレッシュタイプのチーズで、いや、チーズというより、まるでドルチェのような舌触りだ。原産地は南イタリアのプーリア州アンドリアという町である。

賞味期限が短いので、なかなか日本ではみかけないブラータチーズ、しかし、食べれば病みつきになることは請け合い。モッツアレラが大好きな人には、そのワンランク上のリッシュな味わいをぜひ、試して頂きたい。いろいろな食べ方があるが、やはり甘いトマトと一緒に、オリーブオイルとフルール・ド・セルで頂くのが一般的である。

ところが、チャールズのペースト状ブラータは、これまで一度も経験したことがない不思議な食感の、絶品前菜であった。

濃厚でクリーミーなブラータをナイフでこれでもかと叩き、半ペースト状にしたものに、彼が裏の畑で育てた各種ハーブを和えた。まろやかさを引き立たせるために、オリーブオイルを振り回し、食感を立たせるために、フルール・ド・セルをひとつまみ加えたもの。しかし、これが、天地がひっくりかえるほどに美味かった。
「ハーブのサラダなんだけど、ブラータが重要な役割を担うんだ」

今日は、こっそりレシピを盗んでしまったので、皆さん、やっちゃいましょうか? 笑。チャールズ、ごめんね。
ということで、さっそく、作ってみましょう。

ブラータチーズのサラダのつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

ブラータチーズ2個
シブレット1束
ハーブ適量(タイムなどお好みのもの)
フルール・ド・セル適量
胡椒適量
エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル適量
トマト適量(お好みで)
パン適量(お好みで)
材料

1ブラータチーズの下ごしらえ

ブラータチーズを包丁でしっかり崩し、その後、ナイフで叩き形が残らないくらいのペースト状にする。

2ハーブを混ぜる

①をボウルに入れて、シブレットやタイム、ローズマリーなど好きなハーブを、それぞれ適当な大きさにして混ぜる。(余計なソースは入らないので、できれば、生のハーブを使ってください)。

ハーブを混ぜる

3仕上げる

上からフルール・ド・セル、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル、胡椒をかけて完成。

仕上げる
完成

パンに塗って食べると実に美味ですよ。
たとえば、輪切りにしたトマトの上に、このブラータを載せてもよいですし、見た目も美しく、さらにトマトの甘味と酸味が加わり、間違いない仕上がりになるので、お試しあれ。パーティとかで出す場合は、食用のお花を飾りにどうぞ……。ボナペティ。

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac