木の芽は和食を代表する香辛料。薬味として使うとお料理の幅が広がり、春らしい一皿が簡単につくれます。いつもの鯛のお刺身も味わいが変わり、見た目もぐんと美味しそうに。この連載はお酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんがご自分でも「このあてでこんなお酒を呑みたい」と思う、季節のおつまみをご紹介します。
木の芽は山椒の木の若い芽のこと。和食に欠かせない香辛料です。春になって最初に出てくる木の芽は青々として柔らかく、清々しい香りと優しい刺激があります。たくさん食べるものではありませんが、あるとないとでは大違い。木の芽を添えたり、刻んだり、すって合わせたりするだけで、一瞬にして料理が春のものになります。
鯛の刺身と刻んだ木の芽を混ぜるだけですが、香りで鯛の甘みが引き立ちます。木の芽はそのまま使うときは、両手でポンと叩いて香りを立たせますが、包丁でトントン粗く叩くとさらに香りが立ち上ります。
味つけは、木の芽の香りと鯛の甘味を邪魔したくないので塩だけです。とてもシンプルですが、これが日本酒や白ワインにとても合うんです。日本酒は香り高く繊細で綺麗な味わいの山田錦、白ワインはキリッと冷えた微発泡のフレッシュなヴィーニョ・ヴェルデがお薦め。春ならではのお刺身。柑橘を搾ると爽やかさが増し、さらにお酒が進みます!
鯛 | 10枚(刺身用) |
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木の芽 | 適量 |
すだち | 適量 |
塩 | 少々 |
ラディッシュ | 適宜 |
木の芽を洗って水気を拭き取り、包丁で叩く。鯛を薄切りにする。
1の鯛に塩をまぶして、1の木の芽と合わせ、器に盛る。
すだちを添え、あればラディッシュの輪切りをあしらう。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ