せりは独特の香りや苦味がある、もとは春が旬の山菜。煮物や和え物など、いろんな楽しみ方がありますが、下処理なしに簡単につくれる炒め物を教えていただきました。この連載はお酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんがご自分でも「このあてでこんなお酒を呑みたい」と思う、季節のおつまみをご紹介します。
私は山育ちなので、幼い頃から山菜はとても身近な食材でした。今はスーパーでも手軽に手に入るので、都会でも山菜を楽しんでいただけます。下処理が大変なのではとか、どのように食べたらいいのかわからなくて手を出さない方もいらっしゃいますが、独特の苦みは大人の味。とてもいいお酒のあてになるんです。
せりはゆでておひたしや、和え物などにしますが、お肉と相性がいいんです。牛肉はお酒で炒りつけると風味が際立ち、その旨味がせりにからんで味が深まります。このままでも美味しいですが、梅肉入りの大根おろしを合わせるとさっぱりいただけ、生酒にピタリと合います。
牛肉とせりは火の通りに差があるので、時差をつけて炒めます。炒めすぎると、水分が出て味が薄まってしまいますので、せりを入れたら火を止め、余熱で火を入れます。苦味が感じられ、ちょっとくったりしてやさしい歯ごたえになります。短いこの時期にしか味わうことのできない料理なので、ぜひお試しください。
牛こま切れ肉 | 100g |
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せり | 2~3本 |
酒 | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1/4 |
大根おろし | 適量 |
梅肉 | 少々 |
せりを長さ4cmに切る。大根おろしと梅肉を合わせる。
フライパンに酒と塩を入れて中火にかける。沸いたら牛肉を入れて炒りつける。牛肉に火が通ったらせりを加えてザッと混ぜ、すぐに火を止める。
1の梅おろしとともに器に盛る。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ