香り高いモロッコの家庭料理
前菜でもデザートとしても喜ばれる"オレンジのサラダ"

前菜でもデザートとしても喜ばれる"オレンジのサラダ"

みずみずしいオレンジの果肉から、シナモンがほんのりと香り、ミントのすがすがしさがアクセントを添えます。前菜として楽しむのはもちろん、デザートにも喜ばれるひと皿です。スパイス、レモン、ハーブなど異国情緒あふれる香りの多重奏が魅力のモロッコの家庭料理を、料理研究家の口尾麻美さんに教えてもらいました。

モロッコの家庭料理

北アフリカの最西部に位置するモロッコ王国。大西洋と地中海に面し、ジブラルタル海峡を挟んでスペインは目と鼻の先。イスラム教を国教とする国ですが、フランス領だった時代もあり、ヨーロッパの雰囲気も味わえる、異国情緒たっぷりの土地。ここ最近は、かわいい雑貨にも注目が集まっています。

料理研究家の口尾麻美さんがモロッコ料理に注目したのは、20年ほど前、ご主人が出張で訪れたモロッコから、小さなタジン形の小物入れを買ってきたことがきっかけでした。
「実際にこの形の鍋があって、料理をつくるんだ、ということを知って、すごく興味が湧いたんです。最初はパリへ行ったときなどに買い集めていたのですが、それから10年後、タジンをテーマに本をつくることになり、数度にわたってモロッコで家庭や食堂、屋台の料理などをいろいろと見てきました」

今回は、モロッコの家庭で日々、親しまれている朝昼晩の献立と、マラケシュの迷路のようなスーク(市場)のストリートフードや夕方から賑わうフナ広場の屋台料理を教わりました。
朝ごはんは軽めに、ホブスと呼ばれるパンに野菜のペーストやスープを添えたり、ムスンメンという薄い生地を焼いたものに、はちみつをかけたり。これに、甘いクッキーやミントティーを合わせます。このミントティーが、モロッコの人たちは大好き。
「脳天を突き刺すような甘さ!なのですが、一日に何杯も飲むんですよ。イスラム教徒はお酒を飲まないので、ベルベル(モロッコの先住民)のウイスキーとも呼ばれます」

モロッコでの三食は、昼がメインの食事になり、野菜やフルーツの前菜を数品に、タジンなどの主菜、パンが基本。仕事や学校へ出かけた家族も、昼にはいったん帰宅して食事をするので、お母さんの午前中は大忙し。お菓子とお茶でひと息ついたら、すぐに昼食の準備に突入します。
なかでもタジンは、モロッコ料理のマストアイテム。国土の約6割を砂漠が占める彼の地では、少ない水分で調理ができる鍋が欠かせません。今回教わった、鶏肉とレモンのタジンは、とろとろに煮えた鶏肉と野菜に塩レモンの独特の風味がアクセント。日本なら、土鍋や鋳物の鍋を使ってチャレンジを。
また、イスラム教の安息日である金曜日の昼は、クスクスが定番。大皿の料理を家族や知人みんなで分け合うという伝統に心が和みます。ラマダン(断食)明けの夕食に食べる栄養満点のスープ、ハリラも然り。日々の食は信仰とも密接につながっています。

モロッコ料理の多くに使われるのが、クミンパウダーにジンジャーパウダー、パプリカパウダーやシナモン。ハーブはイタリアンパセリとコリアンダー。サフランやターメリックも色づけによく使います。辛味は控えめで、豊かな香りを重ね合わせたエキゾチックな味わいがクセになりそう。似たような味つけでも、食材を替えるだけでまったく違う表情になるし、ゆで卵にクミンと塩をふるだけで、異国の風味になってしまうのが楽しい。
口尾さんが大のお気に入りというサンドイッチや揚げ物など、屋台ごはんも魅力的。次のお休みは、キッチンからモロッコへの旅へ。

“オレンジのサラダ”のつくり方

材料材料 (2~3人分)

オレンジ1~2個
A
・ グラニュー糖適量
・ シナモンパウダー適量
・ ローズウォーター*少々
スペアミント適量

*ローズウォーターはなければ省いてもよい。

1オレンジをカットする

オレンジは厚さ8mmくらいの輪切りにし、皮をむいて皿に並べる。

2スパイスをふる

1の上にAをふりかけ、スペアミントの葉を散らす。

完成

教える人

口尾麻美 料理研究家

口尾麻美 料理研究家

アパレルの仕事を経て料理の道へ。世界各国へ旅をし、インスピレーションを受けた料理をイベントや料理教室で紹介。モロッコのほか、トルコやリトアニア、台湾などをテーマにした著書がある。

文:鹿野真砂美 写真:宗田育子

※この記事の内容は、四季dancyu「冬のキッチン」に掲載したものです。

四季dancyu「冬のキッチン」
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2020年12月10日発売/1,000円(税抜き)
鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。