フランスでは定番の、ブランケット・ド・ヴォー(仔牛のクリーム煮スープ)とは、どんなスープなのでしょうか?作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。
フランスに渡る前、日本ではあまり仔牛肉を食べることがありませんでした。今はどうか分かりませんが、昔は高級肉屋に行かないと手に入らなかった。スーパーなどでは、今もあまり見かけませんね。
最近でも、高級フレンチなどで仔牛のカツレツを食べるくらいで、なぜか日本ではあまり見かけない肉なのですけど、渡仏後、フランスやイタリアでは仔牛肉を食べる風習があるので、カフェで友人に勧められて頼んでみたら、うわぁ、美味い、と仰天したのが、このブランケット・ド・ヴォーとの出会いでした。
物凄く柔らかくて、牛肉感が強くなく、脂肪分も少なめなのでヘルシー、とにかくクリームソースとの相性が抜群で、鶏肉の弾力とは異なる、経験したことのない肉質で、カフェによって味付けや料理方法が違うのですけど、自分好みのブランケット・ド・ヴォーを出す店がありまして、そこに行くと、「いつものください」で通じるほど、ぼくにとって仔牛肉は大好物となったのです。
今日は、カフェの定番な味付けを参照にしながら、少しだけスープ仕立てにしたものをご紹介したいと思います。
ちなみに、仔牛料理と言えば、日本のフレンチやイタリアンのレストランでは「仔牛のカツレツ」が人気ですね。ぼくは白ワイン片手に、素朴にフラー・ド・セルだけで頂いちゃいます。あと、フランスだとポワレも美味しいです。キノコ系のクリームソースで食べるのですが、ブランケット・ド・ヴォーと並んで、国民的カフェ飯と言えるでしょう。しかし、イタリアのサルティンボッカは仔牛肉と生ハムを載せて(巻いてなど様々)焼いて食べるのですが、これがまた格別ですね。キノコ、そしてクリームとの相性抜群です。クリームですけど、生クリームというよりも、要は、ちょっとベシャメルソースのような感じで作っていきます。能書きはこのくらいにして、では、さっそく作りましょうか!
仔牛 | 400g(肩肉またはバラ肉) |
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にんじん | 1本 |
玉ねぎ | 1個 |
クローブ | 3個 |
マッシュルーム | 5個 |
セロリの葉 | 適量 |
ブーケガルニ | 1束(タイムとローリエのみでも良い) |
白ワイン | 大さじ2 |
卵の黄身 | 1個分 |
牛乳 | 大さじ2 |
小麦粉 | 大さじ2 |
バター | 20g |
生クリーム | 大さじ2 |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
仔牛を適当な大きさに切る。3cm四方くらいのブロックで、小さすぎず、大きすぎず、シチューを思い浮かべてカットしてください。にんじんの皮をむき、縦半分に切ってから1cmの厚みに切る。玉ねぎは皮をむき、クローブを直接刺しておく。マッシュルームは半分に切り、バター(分量外)で炒めておく。
①の仔牛を鍋に入れ、ひたひたの水を加え沸騰させます。結構アクが出るので、早い段階で一度茹で水を捨て、肉と鍋を軽く洗って再び鍋に戻しましょう。
②の鍋に、肉がひたひたになるくらいまで水を加え、①のにんじんと玉ねぎ、セロリの葉、ブーケガルニ、白ワイン、塩小さじ1を入れて煮込んでいきます。沸騰したら弱火にし、じっくり、ゆっくり火を通します。
1時間ほどして肉と野菜が柔らかくなったら一度具をすべて取り出し、煮崩れた肉や野菜も取り除き、澄んだスープのみにしてください。
ボウルに、小麦粉を入れ、適量の水で溶いておきましょう。さらに別のボウルに卵の黄身を入れ、牛乳と煮汁を少々加えて溶いておきます。
⑤の準備ができたら、④のお鍋を弱火にかけたままバターを入れ、溶いた小麦粉がダマにならないよう泡立て器で混ぜながら加えます。そこに先に溶いておいた卵液も同じく泡立て器で混ぜながら、一気に流し込みます。これでクリームソースが完成となります。
クリームソースができたら具を戻して、①のマッシュルームを加え、一緒に煮込んでください。30分ほど弱火で煮たら、ほぼ完成。
すぐに食べる場合はここでちょっと生クリームを加え、塩、胡椒で味を調えてください。
個人的には、一晩置くとかなりコクが増すので、必ず、寝かせることにしています。前の晩に作って、翌日の昼に食べることが多いです。おススメですよ!(その場合、生クリームは風味を飛ばさないために、鍋を温め直す時に、入れてください。塩、胡椒をして完成となります)
パンと一緒に食べてもよし、バターライスを添えてもよし。フランス家庭料理、カフェ飯の定番、そう、冬にどうしても食べたくなるスープの一つですね。ボナペティ。
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac