辻 仁成の“パリ・スープ”
辻 仁成の"パリ・スープ"|第十三回"バターナッツスープ"

辻 仁成の"パリ・スープ"|第十三回"バターナッツスープ"

最近日本でも手に入るようになった、バターナッツ(かぼちゃ)を使ったスープのご紹介です。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。

水臭くない奴、バターナッツスープ

フランス人はかぼちゃのポタージュが大好き。秋になるとマルシェにカボチャが並びます。日本のかぼちゃって表面が緑のお馴染みのカボチャが主流。とっても美味しいですけど、それしかないので、カボチャと言えば思い浮かぶのはやはり煮つけでしょうか。一方、フランスは種類豊富なんですが、同じく、カボチャの料理は種類が多くなく、カボチャのピュレ、ロティ、スープくらい。つまり、カボチャって意外と応用が利かない野菜なのです。

実はぼく、カボチャがあまり好きじゃなくて、というのも、何を食べてもカボチャはカボチャでしかないから。とくにフランスのカボチャって、日本のかぼちゃと違って結構水っぽく、他との調和が難しい。人間にたとえると水臭く自我の強い奴みたいな存在なのです。ところが今日ご紹介するバターナッツはあっさりしていて、そこまで水臭くない……。なんか頼むと「いいよ、やるよ」とすぐに同意してくれるナイスガイでして、このバターナッツで作ったスープがフランスで人気なのも頷けます。

最近、日本でも手に入るようになったバターナッツ、この時期、本当にパリの八百屋で飛ぶように売れています。どこの家庭もちょっと寒くなったのでバターナッツのスープを作って食べています。身体が温まるし、しつこくないし、水臭くないので、頼りになるスープ、どうです?ちょっと作ってみませんか?

バターナッツスープのつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

バターナッツ半分(約600g)
紫玉ねぎ1/4個
生姜1片
カレー粉小さじ1
ココナッツミルク400ml
オリーブオイル大さじ1
適宜

1下ごしらえ

紫玉ねぎと生姜をみじん切りにする。バターナッツは2cmくらいの角切りにする。

下ごしらえ

2炒める

ココットにオリーブオイルをひき、紫玉ねぎと生姜を弱火でじっくり炒めます。焼き色がつかないよう注意しながら、丁寧に火を入れていきましょう。紫玉ねぎは普通の玉ねぎより甘味が強いのでできれば紫玉ねぎを使ってください。

炒める

3バターナッツを加える

2にバターナッツを加え、カレー粉を加えて焦がさないように炒めていきます。ある程度火が通ったら、トッピング用のバターナッツを数個確保しておく。

バターナッツを加える

4煮込む

3にココナッツミルク半分を加え、弱火で30分ほど煮ます。

煮込む

5ピュレにする

木ベラで触って、バターナッツが崩れるくらい柔らかくなったら、バーブレンダーでピュレ状にしていきます。そこに残りのココナッツミルクを加え、弱火で温めながらよく混ぜ合わせ、最後に塩で味を調えます。

ピュレにする

6盛りつける

バターナッツがすでに素晴らしい触感、香り、味を持っているので、余計なものは一切必要としません。カレー粉との相性抜群なんです。スープの水分が足らない場合は少し水を足しても良いですね。
バターナッツ、紫玉ねぎのみじん切り、かぼちゃの種をトッピングし、オリーブオイルを少し垂らして完成となります。

盛りつける

かぼちゃが苦手な子供もカレー味なので、美味しい美味しい、と言って食べてくれますよ。これから寒くなる日本の食卓に、頼りになるこのスープ、いかがでしょうか?ボナペティ!

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac