辻 仁成の“パリ・スープ”
辻 仁成の"パリ・スープ"|第七回 セビリアのガスパチョ

辻 仁成の"パリ・スープ"|第七回 セビリアのガスパチョ

情熱の国の食べるスープ「ガスパチョ」。今回も美味しくつくる秘密を伝授します。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。

セビリアのガスパチョを美味しくつくる

スペインのセビリアはご存じのように、アンダルシア州の州都なのですが、日本の方々にはフラメンコで有名な街と言った方が分かりやすいかもしれません。スペイン南部なので、とにかく太陽がすぐそこに……まさに、情熱の街なのです。

夏のセビリア料理と言えば真っ先に思い浮かぶのが「ガスパチョ」でしょう。セビリアのガスパチョはとにかくシンプルで、そして、シンプルだからこそ、毎日の飲める日常的健康食でもあります。トマトやニンニクをはじめとする各種野菜をミキサーにかけ、しかも、丁寧に裏ごしした舌触り、喉越しが特徴で、スペインをほぼ踏破したぼくですが、他を寄せ付けない圧倒的うまさのセビリアのガスパチョには、毎度、言葉を失っております。

もちろん、現地で、あの空気感の中、食べていただくのがベストですが、今回は、日本でセビリアの味わいを再現してもらいたく、レシピを工夫してみました。ぼくのYoutube「2Gチャンネル」でもセビリア特集をやりましたが、そこで紹介させていただいた老舗レストランのオーナー、ラモンおじさんから教わったのが今日、ご紹介する本場セビリアのガスパチョとなります。特段、目を見張るプレゼンテーションがあるわけでもないのですが、だからこそ、納得の王道ガスパチョです。ラモンおじさん曰く、コツはね、前日の仕込みと裏ごしだよ、と教えてくださいました。
いいですか?さあ、さっそく作ってみましょう。

ラモンおじさんのセビリアのガスパチョ

材料材料 (4人分)

プチトマト300g
きゅうり1本
パプリカ100g
玉ねぎ50g
バゲット4cmくらい(なければ食パン8枚切り1枚)
にんにく1/2片
オリーブオイル50ml
ワインビネガー大さじ1
適量
胡椒適量
メロンお好みで(飾り用、ミントでも)
カイエンペッパー適量

ガスパチョは食べる前日から準備することが、ともかく美味しくいただく一番大事なコツになります、とラモンおじさんはしつこく力説しておられました。

1下ごしらえ

トマトは湯むきし、種を取る。きゅうり、パプリカの皮をむき、きゅうりは塩もみする。玉ねぎはスライスして水にさらす。にんにくはみじん切りしておきます。

2マリネする

ボウルに適当な大きさに切った1の野菜をすべて入れ、小さくちぎったパン、オリーブオイル、塩、胡椒を加えてよく混ぜ、ラップをして一晩冷蔵庫でマリネしておいてください。

マリネする
マリネする

3裏漉しする

翌日、ビネガーを加え、マリネした2をミキサーにかけ、裏漉しをします。お皿にスープを盛り、ズッキーニ、トマト、パプリカなど小さく切り揃えた野菜(分量外)とメロンをちらし、カイエンペッパー、オリーブオイル(分量外)をかけて完成となります。

裏ごしする

前日の仕込み、マリネ、そして、当日の裏ごし、この部分をきちんとやりさえすれば、逆に誰でも本格的なセビリアのガスパチョをつくれるというわけです。

今回ご紹介するガスパチョは、トマトとパプリカ、玉ねぎ、きゅうりが加わったいわゆる王道のセビリア風ガスパチョとなります。裏漉しして口当たりなめらかになったスープにトッピングした野菜の食感を加えることで、ガスパチョがまさに食べるスープに生まれかわるわけです。ちょっとした労力で最大級の成果を!ボナペティ!

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac