ポルトガルといえば、日本から見るとヨーロッパの端っこの国で、遠い異国の地に感じるでしょう。しかし、「日本の家庭料理のルーツはポルトガルにあり!」と言えるほど、実は近しい国なのです。海外旅行が恋しい今日この頃ですが、料理で遠くて近い異国を感じてみるのはいかがでしょうか。
天ぷらや南蛮漬けは16世紀の南蛮渡来の料理がルーツ。これらがまさに、日本人が出会った最初のヨーロッパの味だ。天ぷらは、temperar(テンペラル・味つけする)や、キリスト教の肉食を禁じる日、Quatro temporas(クアトロ・テンポラシュ)などの言葉が語源と推測されている。
ポルトガルの天ぷら(フィレッテ)は、長崎に残る郷土料理“長崎天ぷら”と極めてよく似た、衣に味がついたぽってりしたフライ。南蛮漬けは、当時、南蛮人と呼ばれた彼らが、揚げた魚などを唐辛子やねぎを使ったマリネ液に漬けた料理が元祖。ポルトガルではエスカベッシュの名の定番料理だ。
白身魚 | 150g(好みのもの。刺身用のサクで) |
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パセリ | 小さじ1(みじん切り) |
ディル | 小さじ1(粗みじん) |
薄力粉 | 30g |
卵 | 1個 |
砂糖 | 少々 |
塩 | 少々 |
E.V.オリーブオイル | 小さじ1 |
揚げ油 | 適宜 |
ボウルに薄力粉、卵、砂糖、塩、オリーブオイルを入れてよく混ぜる。香りや色を生かすため、パセリ、ディルは最後に加えて混ぜ、ラップをして一晩ねかせる。
白身魚は刺身大のそぎ切りにし、1の衣を全体にしっかりまとわせる。
揚げ油を160℃(やや低め)に温め、2の白身魚を入れ、火が通るまでじっくり揚げる。好みでレモンを添えて。
「油で揚げる」という調理法を日本に伝えた、天ぷらの本家ポルトガルでは、揚げ物の種類も非常に多い。最大の特徴は衣にも味がついていること。ほぐした干しダラに衣をつけた、かき揚げ風天ぷらもある。
タコの天ぷら
タコをよく食べるポルトガルでは、揚げ方もいろいろ。写真のように下ゆでしたタコの足に衣をつけてそのまま揚げたり、蒸した後、縦に切り開いて薄く広げて並べ、蒲焼きのような形で揚げるものもある。
小アジの南蛮漬け
揚げた魚を唐辛子やねぎなどとマリネする調理法も、ポルトガルから。ポルトガル版エスカベッシュは、ワインビネガーとオリーブオイルのマリネ液に、唐辛子、にんにく、ローリエと揚げた魚を漬けたもの。
東京のポルトガル料理シーンを引っ張る第一人者。イタリア留学時代、レストランで働き出したのをきっかけに、イギリス、タイなどで研鑽を積む。ロンドン時代、ポルトガル人がつくった賄い料理のおいしさに感動し、ポルトガル料理に開眼。帰国後、飲食店の立ち上げなどを経て、2010年に独立。
文:馬田草織 写真:公文美和
※この記事の内容はdancyu2013年2月号に掲載したものです。