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ガリッと鮮烈!黒胡椒のステーキ|「ル・マンジュ・トゥー」谷シェフの胡椒クッキング②

ガリッと鮮烈!黒胡椒のステーキ|「ル・マンジュ・トゥー」谷シェフの胡椒クッキング②

砕いた粒胡椒の、香りと食感がインパクト大!でもシンプルなレシピのビーフステーキです。「胡椒は、魔物です。間違った使い方をすると、とんでもないことになる」と、その料理哲学に信奉者の多い谷昇シェフは語る。「塩・胡椒」とセットで使うなんてもってのほか。胡椒の特質を知ってこそ、使う意味あり。谷シェフ、胡椒との付き合い方を教えてください!

黒胡椒必須のステーク・オ・ポワブル

胡椒にあまり頼らないフレンチでも、例外はある。「ステーク・オ・ポワブル(黒胡椒のステーキ)というこの料理の場合、名前に胡椒とつくくらいですから、恐ろしいほど(笑)たっぷり使います」。砕いた胡椒のインパクトを味わうのが、何よりもこの料理の醍醐味なのだ。

「胡椒を噛んだときに『カン!』という鮮烈な香りが得られるよう」に、肉を焼く前に粒を砕いて、表面にたっぷりとまぶす。いざフライパンで加熱すると、鼻を突き刺すような香りと、目にしみる刺激が立ち上る。ポークソテー同様、苦味やえぐみ、焦げ臭さを出さないよう、強火で手早く火を通すことが鉄則だ。焼いた後、胡椒をざっと払い落とす。「肉につけたいのは、香り。もったいないからと、まぶしたまま食べないように。辛すぎて、むせてしまいますよ(笑)」。

黒胡椒のステーキといえば、最初の師匠、アンドレ・パッションさんを思い出す。「銅鍋の底で大量の粒胡椒を豪快に砕いていた姿が、ただただ、かっこよかった!」と、シェフは興奮気味に語る。「厨房中に響くバチバチという音や胡椒の香りは、小僧だった僕にとって刺激的で感動的でしたね」。40数年前に見た光景ですが、ずっと脳裏に焼きついているそうだ。「だから、今でも『鍋底で胡椒を砕く行為』が好き(笑)。理屈じゃないんです」。

黒胡椒のステーキのつくり方

材料材料 (2~3人分)

牛ロース厚切り肉1枚(400g)
3.2g
黒胡椒20g
オリーブオイル大さじ1

1塩をふる

牛肉は室温に戻す。両面に塩をふり、肉に塩分が浸透して表面に水分が浮いてくるまで30分ほど置く。

塩をふる

2黒胡椒を砕く

黒粒胡椒を大きめのバットに平らに広げ、鍋底を押し当てて、てこの原理で砕く。

黒胡椒を砕く
黒粒胡椒を大きめのバットに平らに広げ、鍋底を押し当てて、てこの原理で砕く。

3音がしなくなるまで砕く

音がしなくなったら、だいたい砕けた証拠。写真のような感じに。適当な鍋がない場合は、肉叩き、または麺棒でつぶす。

音がしなくなるまで砕く

4肉に貼り付ける

胡椒を肉の両面に満遍なく貼りつける。

肉に貼り付ける

5肉を焼く

フライパンにオリーブオイルを入れて強火で熱し、盛りつけたときに上になる面を下にして牛肉を入れて焼く。焼き色がついたら裏返し、裏面も同様に焼く。

肉を焼く
肉を焼く

6肉を落ち着かせる

バットなどに取り出し、切ったときに肉汁が流出しないように少し置いて落ち着かせる。表面についた胡椒を包丁で払い落とす。

肉を落ち着かせる

7仕上げる

肉を筋のところで部位別に切り分けてから、食べやすい大きさに切って器に盛る。

仕上げる

8完成

焼き加減はミディアムレア。牛肉の赤身と脂の旨味が口の中で溶け合う最中に、奥歯でガリッと噛み砕いた胡椒の香りが一気に広がる。

完成
お店での「胡椒」の使い方
「ル・マンジュ・トゥー」ではおもに4種の胡椒を使い分けている。最も出番が多いのは東南アジア産の黒胡椒。対してマダガスカル産は辛さがなく、エキゾチックな香りが特徴だ。香り穏やかな白胡椒はイタリア製。甘味のあるマダガスカル産のロングペッパーは、スイーツに使用する。

コンソメをつくるときの谷シェフの胡椒使いがユニーク。「シノワにペーパーを敷き、その上に胡椒を挽いておき、コンソメを漉します。こうすると胡椒の粒が混入せず、わずかな辛味と香りが溶け出ます。このとき立ち上る香りは、まさにザ・胡椒。僕が一番好きな香りかもしれない」。

教える人

谷 昇

谷 昇 「ル・マンジュ・トゥー」オーナーシェフ

1952年東京生まれ。都内のレストラン勤務、二度の渡仏などを経て、1994年に「ル・マンジュ・トゥー」を開店。現在オーナーシェフとして日々、厨房に立つ。お気に入りの胡椒挽きはプジョー製。「ツール・ド・フランスのファンだからね(笑)」。

文:佐々木香織 写真:鈴木泰介

※この記事の内容はdancyu2017年9月号に掲載したものです。