旬の野菜の知恵袋。
醤油と辛子が香る菜の花の混ぜ込みごはん。

醤油と辛子が香る菜の花の混ぜ込みごはん。

菜の花とちりめんじゃこ、炒り卵の混ぜ込みごはんのレシピを紹介します。旬の魅力を活かすため、和の下ごしらえが味の決め手です。

「陸あげ」と「醤油洗い」をマスターしましょう。

菜の花は旬の時季になると、黄色い花を咲かせるために多くの栄養素を蓄えます。
カルシウム、鉄分、葉酸、ビタミン、βカロテン、マグネシウム、など数えだすとキリがないほど。風邪が蔓延しやすい冬には、意識的に口にしたいものです。
せっかく栄養価の高い食材でも熱の入れ方や水に浸ける時間で、含まれている成分は溶け出してしまったり、簡単に壊れてしまいます。
その点、和食の調理法は実によくできています。野菜の香りや味わいを損なわないよう配慮しているだけでなく、食材の栄養素を無駄にしない知恵が詰まっているのです。
今回は和食の調理法で下ごしらえした菜の花と、ちりめんじゃこの風味をまとった混ぜ込みごはんをつくってみましょう。

調理法の引き出しを増やせば、野菜の食感や香りは自由自在。料理のレパートリーは掛け算方式で増えます。

菜の花の混ぜ込みごはんには、まず「菜の花の辛子和え」が必要です。
そのためには、和食の調理法「陸(おか)あげ」と「醤油洗い」をマスターしましょう。
陸あげとは、ゆでた野菜をざるに広げて自然に冷ますこと。水にとって冷ました野菜は水っぽく、味わいがうすく感じられます。日持ちはしますが、香りや個性が弱まるので菜の花の苦味を大切にしたいのであれば陸上げをおすすめします。

陸あげは湯からあげた野菜をうちわであおいで、熱が入るのを防ぎます。

野菜の熱がとれたら、次は醤油洗いです。
ゆでた野菜に醤油を回しかけてもみ込むことで、水分を抜きながら下味をつけます。ギュッと搾ってから、辛子を和えることで野菜によく染み込み、香り高くめりはりのある味わいに仕上がります。
醤油洗いをした野菜の和え物は時間が経っても味が変わりづらいので、弁当の惣菜をつくるときに試してみるとよいかもしれません。

温かいごはんと合わせると、菜の花の香りが高まります。

でき上がった辛子和えをほかほかの炊きたてごはんに混ぜ込み、菜の花と辛子の爽やかな香りが湯気と共に上がってくる瞬間は、食欲が湧き立つ至福のひとときです。
さっくりと混ぜ合わせながら茶碗によそって、温かいうちにめし上がってください。旬の菜の花の魅力を存分に感じることができるはずです。

炒り卵を加えれば目にも美しいです。お好みで胡麻を振りかけてめし上がれ。

菜の花とちりめんじゃこの混ぜ込みごはんのつくり方

材料材料 (4人分)

菜の花200g
2合
ちりめんじゃこ40g
昆布1枚(5cm四方)
2個
大さじ1
醤油大さじ3
適量
練り辛子小さじ2
材料

1米を炊く

米を研ぎ、2合分の水、酒、昆布を加えて炊く。
炊きあがる5~10分前にちりめんじゃこを加えて炊き上げる。

混ぜこむ具材の味に負けないように酒と昆布を一緒に炊き上げて、ごはんに旨味を纏わせます。
ごはんが炊き上がる少し前に蓋を開け、サッとちりめんじゃこを散らしましょう。

2菜の花の辛子和えをつくる

菜の花は大きな葉が付いていれば、外して茎と別にしておく。
鍋にたっぷりの湯を沸かし、茎は40秒ほど、葉は10秒ほどゆでてざるに広げて粗熱をとる。
2cmの長さに切ってからボウルに入れて、醤油を回しかけて揉み込む。菜の花から水気が出てきたら搾ってほぐしておく。搾り汁を小さじ2ほど取り置き、練り辛子をよく溶かしてから菜の花と和える。

茎に熱が通りにくいので、太い方だけ10秒ほど湯に浸けて、穂先を入れてから30秒ほどゆでる。
余熱があるので、野菜は少し硬めなゆで上がりで大丈夫です。
野菜の繊維を潰さないように醤油を揉み込みます。
水気が滴らなくなるまで両手で搾り、まな板の上などにほぐしておきます。
辛子の塊がないように溶かしましょう。
菜の花をボウルに戻して、搾り汁を含ませるように和えます。

3炒り卵をつくる

別のボウルに卵を溶きほぐして酒小さじ1/2と塩少々を加える。
油を弱火で熱したフライパンに卵を加え、箸4本で混ぜながら細かい炒り卵をつくる。

卵を混ぜる箸は4本使うと、細かい炒り卵ができ上がります。

4混ぜ合わせる

炊き上がったごはんをほぐしたところに、2と3を加え混ぜ合わせたら器によそう。

米が潰れてしまわないよう混ぜすぎには注意です。
菜の花のほろ苦さ、醤油と辛子の香り、じゃこの滋味、卵の食感をひと口で味わえます。

文:植松良枝 写真:宮濱祐美子

植松 良枝

植松 良枝 (料理研究家)

四季に寄り添った食と暮らしを提案する料理研究家。菜園での野菜づくりがライフワーク。春夏秋冬それぞれの季節が極まり、次の季節の準備期間である「土用」を暦の中でも特に大切にしている。一児の母となり、忙しい日々の中で家族への想いも増してさらに深く土用を考えるようになった。