スープ作家の有賀薫さんが披露する1月のスープは「オニオングラタンスープ」。トロッと溶けたチーズと、じっくり炒めた玉ねぎの旨味が魅力の食べるスープです。できたてのあつあつを食べるのが醍醐味ですよ。
今回、紹介するのはスープ・ア・ロニョン・グラティネ、つまり、オニオングラタンスープ。
ボリュームたっぷりの「食べるスープ」です。フランス料理なのですが、高級レストランで出されるものではなく、寒い寒い冬の夜、芝居やコンサートへ行く人たちが小腹を満たすためにビストロやブラッスリーで食べる、カジュアルなスープです。
スープに浮かべたパンがふくらみ、食べごたえはスープというよりまさにグラタン。日本だとスープは「飲む」ものですが、欧米では「食べる」料理。スープは硬いパンを水分でふやかして食べることを目的としていたからです。
オニオングラタンスープに浮かべるバゲットは、そんな昔の名残ともいえます。安価な玉ねぎのスープにパンを浮かべてこんなご馳走に仕立ててしまう発想が、素晴らしいですよね。
つくり方は、いたってシンプル。うす切りの玉ねぎを飴色になるまで炒め、ブイヨンでのばしたものがベースになります。あとは、器によそったスープにパンを浮かべ、チーズをのせてオーブンで焼くだけです。
玉ねぎをじっくり炒めるのは時間がかかりますし、オーブンを使うのはハードルが高いという方は多いでしょう。でも、ブイヨンは顆粒でもつくれますし、パンに焦げ目をつけるのはオーブントースターで大丈夫。
失敗は少なく、おいしさが約束されたようなスープです。ぜひつくってみてください。
つくり方のポイントを、ふたつ紹介します。
まずは、玉ねぎの炒め方です。玉ねぎの水分がなくなって、少し焦げ付くぐらいまで炒めてから、少量の水を加えること。この水が鍋肌に付いた焦げをゆるめ、玉ねぎ全体を色づけるエキスになります。じっくり火を入れる、水を足して焦げを全体に馴染ませるというくり返しで、色と旨味を深めていくことができるのです。
もうひとつのポイントは、チーズです。ピザトーストなどに使うシュレッドチーズだけでも良いのですが、グリュイエールやエメンタール、ゴーダやパルミジャーノ・レッジャーノといったナチュラルチーズをおろして合わせると、一気にコクと風味がアップします。今回はグリュイエールチーズを合わせました。にんにくの切り口をすりつけたトーストをスープにのせて、上からチーズをたっぷりかけてくださいね。
玉ねぎ | 2個 |
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バゲット | 4枚(うす切り) |
バター | 30g |
グリュイエールチーズ | 30g |
溶けるチーズ | 20g |
にんにく | 1片 |
チキンブイヨン | 300mL |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
玉ねぎは皮を剥き、繊維に沿ってうす切りにする。
鍋にバターと玉ねぎを入れ、弱火で炒める。玉ねぎが色づいて焦げ付きそうになったら、大さじ1の水を加え、焦げ付いた部分をこそぐようにして混ぜ合わせる。水分がなくなり、玉ねぎが色付くまで炒める。玉ねぎが飴色になるまで30分ほど繰り返し炒め合わせる。
チキンブイヨンを加えてひと煮立ちさせる。5分ほど弱火で煮たら、塩胡椒で味を整える。
バゲットににんにくの切り口をこすりつけ、トーストする。オーブンを200度に余熱する。
耐熱の器にスープを盛り付け、バゲットをのせ、溶けるチーズとグリュイエールチーズを上からかける。オーブンで12分ほど焼いたらでき上がり。
文:有賀薫 写真:キッチンミノル