ゼラチンのことを知れば、ゼリーはおいしく固まります。粉ゼラチンと板ゼラチンを使って果汁100%オレンジジュースのぷるぷるゼリーをつくりましょう。
ゼリーが固まりません。
ジュースにゼラチンを溶かして、冷蔵庫で冷やすこと2時間。待てど暮らせど、悲しく波打つゼリーの水面。
レシピに書いてある通り、温かいジュースにゼラチンを溶かしたのに……。
なんで固まらないの?
教えてください森崎繭香さん。
「失敗の原因は、温度管理にあります!」
森崎さん、きっぱりと答えます。
「ゼラチンは高い温度の液体に溶かせばいいわけではないんです。適切な温度で溶かさないと上手に固まりません。ゼリーづくりは、まずゼラチンのことを知ることから始めましょう」
ゼラチンのことを知る?
何度も耳にしたことがある言葉だけれど、確かにゼラチンのことはよくわかっていなかった。
森崎さん、ゼラチンのこと、もっと教えてください!
「ゼラチンには、“粉ゼラチン”と“板ゼラチン”があります」
あっ、それは、なんとなくわかります。スーパーでよく見かけますよね。
いったい、何が違うんでしょう?
「それぞれ用途が違います。粉ゼラチンは、g単位で量を調節できるのが良いところです。少量をつくる家庭でのお菓子づくりに向いてます。板ゼラチンは固形なので計量が簡単。大量にお菓子をつくるパティシエなどのプロが使うことが多いですね。どちらも50度~60度の液体に加えると、きれいに溶けるという性質は同じですよ」
でもね、と森崎さんは続けます。
「70度以上の液体にゼラチンを溶かすと、コラーゲンが変質してもったりとした脂のような匂いを放つんです」
さらに、と森崎さんは言います。
「沸騰している液体に溶かすと、コラーゲンが分解されてしまって、ゼリーが固まらないなんてことにもなります」
なるほど。せっかくゼリーをつくったのに、うまく固まらなかったのは、液体の温度が高すぎたんですね。
「そうとも言い切れないんです。温度が50度以下でも、ゼラチンのコラーゲンは溶け残って、うまく固まりません。ゼラチンと上手く付き合うコツは、温度管理にあるんです」
ゼラチンが温度に敏感なんだということは、わかりました。厄介ですね、ゼラチンは。
「こう考えたらどうでしょう。ゼラチンは、50度~60度の液体に加えて、しっかり混ぜて溶かす。このことさえ、しっかり守れれば、ゼリーづくりの失敗は大いに減ります。簡単じゃないですか?」
温度を測りながらつくれば難しくないのですが、今回はより簡単で失敗しない方法を森崎さんが披露します。
粉ゼラチンと板ゼラチンは液体に溶かす方法が違うので、それぞれを使ってゼリーをつくってみましょう。
果汁100%オレンジジュース | 300ml |
---|---|
粉ゼラチン | 5g |
水 | 30ml |
グラニュー糖 | 30g |
オレンジジュースを常温に戻しておく。
粉ゼラチンを水にふり入れ、竹串で混ぜて溶かす。
粉ゼラチンの上から水を加えてしまうと、ゼラチンはダマになってしまいます。気をつけましょう。
小鍋にオレンジジュースの半量と、グラニュー糖を入れて中火にかける。混ぜながらグラニュー糖を溶かして、沸騰直前で火から下ろし、残りのオレンジジュースを加える。
沸騰直前(80度~90度)のオレンジジュースと常温(20度~35度)のオレンジジュースを混ぜると、50度~60度になります。こうすれば、温度計がなくてもゼラチンをうまく溶かせます。
1を2に加えて、溶け残りがないようにゴムベラで混ぜる。
ゴムベラにポツポツと付くのは、溶け残りのゼラチンです。もしゼラチンの塊を見つけたら、そっとすくいあげてください。濾し器に擦り付けるようにして、液体に溶かし込めば、食感のムラなく仕上がりますよ。
3の粗熱が取れたら器に流し入れ、表面の気泡を取り除く。冷蔵庫で4時間以上冷やし固めれば完成!
冷蔵庫に入れるときに液体に気泡が浮いていると、その形のまま固まってしまいます。スプーンなどで取り除いてあげましょう。
果汁100%オレンジジュース | 300ml |
---|---|
板ゼラチン | 5g |
グラニュー糖 | 30g |
オレンジジュースを常温に戻しておく。
板ゼラチンは冷水(分量外)に5分ほど入れて、ふやかす。
板ゼラチンをふやかす水が20度以上だと、溶けて出してしまうので冷水または氷水に入れましょう。
小鍋にオレンジジュースの半量と、グラニュー糖を入れて中火にかける。混ぜながら温めて、沸騰直前になったら火から下ろし、残りのオレンジジュースを加える。
ふやかした板ゼラチンの水気を手で搾る。板ゼラチンを鍋に入れ、よく混ぜて溶かす。
板ゼラチンの水気は手でギュッと握って、できるだけしっかり搾りましょう。水気を含んだ板ゼラチンを加えると、水分量が増えて、ゼリーの仕上がりが変わってしまいます。
2の粗熱が取れたら器に流し入れ、表面の気泡を取り除く。冷蔵庫で4時間以上冷やし固めれば完成!
1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。
――明日につづく。
文:長嶺李砂 写真:公文美和