スープをじっくりつくる、手軽につくる
本気で「参鶏湯」をつくる。

本気で「参鶏湯」をつくる。

鶏の旨味と、漢方食材の滋味を味わう「参鶏湯」(サムゲタン)。実は夏に飲むスープなんです。体を温めて、暑い夏に備えましょう。

丸鶏を使った滋養のスープ「参鶏湯」。

スープ作家の有賀薫さんが披露するのは参鶏湯。冷たい食べ物の摂りすぎで弱った胃腸を労ってくれる。
スープ作家の有賀薫さんが披露する参鶏湯。冷たい食べ物の摂りすぎで弱った胃腸を労ってくれる。

「好きなスープは何ですか?」と聞かれたら、参鶏湯(サムゲタン)はベスト5に必ず入ります。鶏と高麗にんじん、もち米や棗(なつめ)などをじっくり鍋で煮込んだ韓国のスープです。時間をかけて煮出した濃厚な鶏のだしに、もち米でとろみがついた滋味あるスープは、なんともいえず心落ち着く味わいです。

家庭用のレシピでは、丸鶏1羽は扱いにくいこともあって、手羽元や骨付きのもも肉などで代用することがほとんどです。私も長い間、手羽元を使った参鶏湯で満足していました。でも、初めて丸鶏を煮込んだ参鶏湯を食べたら……段違いのおいしさに驚きました。素材を丸ごと調理することの素晴らしさを感じる味わいです。休日を利用して、丸鶏を使った参鶏湯をつくってみてください。

丸鶏から出る旨味と、漢方食材の香りだけで味わい深く仕上がる。調味料はほとんど使わない。
丸鶏から出る旨味と、漢方食材の香りだけで味わい深く仕上がる。調味料はほとんど使わない。

さて、いかにも寒い季節にぴったり合いそうな参鶏湯。ずっと冬のスープだと思っていたのですが、実は夏のスープなんです。韓国には伏日(ポンナル)という、日本でいうところの、土用の丑の日のような日があり、7月中旬から8月中旬にかけて3日間を、それぞれ初伏(チョボク)、中伏(チュンボク)、末伏(マルボク)と呼びます。伏日には滋養のつくものを食べる習慣があって、参鶏湯もそのひとつ、というわけです。

夏に熱いスープを食べるのは「以熱治熱」といって、熱々の食べ物で暑さを治めるという食養生の考え方。
夏に熱いスープを食べるのは「以熱治熱」といって、熱々の食べ物で暑さを治めるという食養生の考え方。

参鶏湯に使われるのは、不老長寿の薬といわれる高麗にんじん、血行をよくして胃腸機能を強める棗やにんにく、腎機能を補う栗など、滋養ある食材ばかり。食べているうちに体がぽかぽかしてきます。暑い中大きな鍋の前に立って料理をするのは難儀ですが、汗をかきつつ食べれば、体がすっきり軽くなりそうです。

有賀さんが参鶏湯をつくるときは、韓国食材のスーパーで、丸鶏と一緒に高麗人参や棗なども一緒に買ってくる。
有賀さんが参鶏湯をつくるときは、韓国食材のスーパーで、丸鶏と一緒に高麗にんじんや棗なども一緒に買ってくる。

食べるときは本来トッペギという、火にかけられる器に移します。鶏が大きいため今回は土鍋にしました。松の実、クコの実、糸とうがらしなどは、好みで使ってください。

今年の夏も暑くなりそうです。参鶏湯で暑気払いしてはいかがでしょうか。

クラシック・参鶏湯のつくり方

材料材料 (4人分)

丸鶏1羽
もち米75g
長ねぎ1/2本
干し棗3個
にんにく3片
剥き栗3個
高麗にんじん2本
昆布10cm
しょうが20g
松の実10g
クコの実10g
糸とうがらし適宜
ごま油小さじ1
適宜
丸鶏は大きすぎると鍋に入らないので、1kg以下のものを選ぶ。鶏の形を整えるために使う竹串を2本と、たこ糸も準備しましょう。
丸鶏は大きすぎると鍋に入らないので、1kg以下のものを選ぶ。鶏の形を整えるために使う竹串を2本と、たこ糸も準備しましょう。

下準備

もち米を水に30分ほど浸け、ザルに上げる。水気がなくなったらごま油を混ぜ合わせる。長ねぎの白い部分をせん切りして、白髪ねぎにする。

1 鶏を切る

鶏の首、手羽先、尻の脂肪を切り取って腹の内側をぬめりがなくなるまで洗う。ペーパーで水気を取り、表面と内側に塩20gをすり込む。切り分けた首、手羽先は、鶏と一緒に煮込んでダシをとる。尻の脂肪は、参鶏湯には使わないので冷蔵庫で保存する。

首の付け根にある骨のくぼみに包丁の根元をあて、押し込むようにして切る。
首の付け根にある骨のくぼみに包丁の根元をあて、押し込むようにして切る。
手羽先も関節にある骨のくぼみに包丁の根元をあて、切る。
手羽先も関節にある骨のくぼみに包丁の根元をあて、切る。
鶏の尻にある尻尾のような脂肪(ぼんじり)を包丁で切る。
鶏の尻にある尻尾のような脂肪(ぼんじり)を包丁で切る。毛と骨、油壺という部分を取り除いて、グリルで焼くとおいしく食べられる。

2 鶏に具を詰める

鶏の形を整えるための竹串とたこ糸を用意する。鶏の腹の中に、下準備をしたもち米、棗1個、皮を剥いたにんにく1片、栗2個を入れ、竹串で縫い合わせるようにして腹を閉じる。足をクロスさせてたこ糸で縛る。

1、最初にもち米を半量入れて、棗、にんにく、栗を入れた後、残りのもち米を入れるようにすると良い。
1、最初にもち米を半量入れて、棗、にんにく、栗を入れた後、残りのもち米を入れるようにすると良い。
2、鶏の腹側から、左右の皮を交互に竹串で突き刺していく。
2、鶏の腹側から、左右の皮を交互に竹串で突き刺していく。
3、具材が出てしまう隙間がないように、縫い合わせた皮をきつく寄せる。
3、具材がはみ出る隙間がないように、縫い合わせた皮をきつく寄せる。
4、背中側の縫いづらい箇所は、左右の皮を寄せ合わせて、別の竹串で突き刺す。竹串の長さが余っている部分は、はさみで切り落とす。
4、背中側の縫いづらい箇所は、左右の皮を寄せ合わせて、別の竹串で突き刺す。竹串の長さが余っている部分は、はさみで切り落とす。
5、足を交差させて、タコ糸で縛る。
5、足を交差させて、タコ糸で縛る。
6、切り分けた、首、手羽先、尻の脂肪は、参鶏湯には使わないので冷蔵庫で保存する。
6、鶏の整形はでき上がり。このように詰め物をしてオーブンで焼くと、ローストターキーになる。

3 煮込む

鍋に鶏、首、手羽先、棗、にんにく、高麗にんじん、昆布、しょうが、長ねぎの青い部分を入れ、鶏が浸る程度の水(分量外)を加えて中火にかける。沸騰したら鶏からアクが出るのでお玉で取り除き、2時間煮込む。

鶏を煮込みすぎると、肉の食感がパサパサになるので注意。
鶏を煮込みすぎると、肉の食感がパサパサになるので注意。

4 盛り付ける

煮込んだ鶏と具材、スープを土鍋に移す。松の実、クコの実を散らし、白髪ねぎと糸とうがらし、塩を別の皿に乗せて添えたら完成。

「まずは、スープから飲んで見てください。鶏の旨味と漢方食材のエキスで体の内側から温まってきますよ」
「まずは、スープから飲んで見てください。鶏の旨味と漢方食材のエキスで体の内側から温まってきますよ」

――明日(「参鶏湯」をかんたん食材でつくる。)につづく。

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2018年09月28日発売 / 1,404円(税込)

文:有賀薫 写真:キッチンミノル

有賀 薫

有賀 薫 (スープ作家)

1964年、東京都生まれ。ライター業のかたわら、家族の朝食にスープをつくり始める。2011年より始めた朝のスープづくりは、約3000日にわたって続けている。2018年には『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(文響社)が第5回料理本大賞入賞。スープの実験イベント"スープ・ラボ"はじめ、スープをテーマにしたイベントを多数主催。著書に『365日のめざましスープ』(SBクリエイティブ)、『スープ・レッスン』(プレジデント社)がある。