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「辛い炒飯」はお好きですか?

「辛い炒飯」はお好きですか?

甜麺醤で甘く調味した挽き肉と、豆板醤の辛味と香りをまとわせたごはんが、絶妙のコントラストを生む。魂を揺さぶるような辛さとふくよかな旨味を併せ持つ、未知なる炒飯の扉を開こう!

目が覚める辛味と、爽快な香りを引き出すべし!

炒飯に胸が高鳴るなど、そうあることではない。だが、この店は違う。
厨房から漂い流れる、甘く痺れるような芳香に包まれて目の前に運ばれてくるのは、美しい麻辣色にしっとり輝く“四川炒飯”だ。米のひと粒ひと粒にしみ込んだ豆板醤の爽やかな辛味と、挽き肉のコクのある甘味。それらが渾然一体となってインパクトのある味を醸し出し、食事の締めを祝うべく歓喜のラッパが鳴り響く。
「四川炒飯は何といっても香りが大切。最初に中華鍋で豆板醤をよく炒め、その香りをしっかりごはんに移します」と話すのは、菊島弘従シェフだ。
豆板醤は焦げやすいため、仕上げに加えるところも多いが、それではただ辛いだけ。きちんと炒めて香りを立たせることで、目が覚めるような辛味と爽快な香りがもたらされるという。

はじめに豆板醤を中火で焼いて、最大限に香りを引き出す!
はじめに豆板醤を中火で焼いて、最大限に香りを引き出す!

具材は豚挽き肉、ねぎ、高菜に似た中国四大漬物のひとつ、芽菜(ヤーツァイ)そして卵。一見、シンプルな四川炒飯のおいしさの秘密は、実はこれらの丁寧な下ごしらえにある。
まず、挽き肉は生姜汁、紹興酒、白胡椒を加えて手でもみ、スープで煮るようにして水分がなくなるまで炒めて、甜麺醤で調味しておく。
「ここで油を使うと、肉が硬くパサパサになってしまいます。純粋に豚の脂だけで炒めることでコクのある旨味が生まれます」
辛味が際立つ四川料理は、そこに旨味と甘味を上手にプラスするのがコツ。しっかり下味がついてそぼろ状になった甘い挽き肉は、麻婆豆腐の具にも使われ、これだけでも立派なごはんのおかずになるほどだ。

豆板醤と卵の融合!焦げないよう終始中火で炒める。
豆板醤と卵の融合!焦げないよう終始中火で炒める。

もうひとつのコツは、ねぎの切り方。菊島シェフは表と裏に斜めに包丁を入れ、ねぎを蛇腹状にしてから小口切りにする。「こうするとねぎがパサパサにならずに柔らかく、いつまでも瑞々しいんです」。
さらには香りも立ち、ごはんとしっとりなじむ。まさにいいことずくめなのだ。
あとは焦げないように中火で炒めよう。あらかじめ温かいごはんに卵液の3分の1をまぶして、ほぐしておけば時間も短縮。中華鍋の鍋肌にごはんを押しつけ、焼いてはほぐすを繰り返すことでパラパラの食感に。最後に紹興酒とスープを加えて、ふんわりと仕上げる。
「広東では強火でつくりますが、四川料理はもともと家庭料理から発展したもの。だから家庭の火力でも十分おいしくできますよ」
いざ参らん、灼熱の炒飯へ!

“四川炒飯”のつくり方

材料 材料 (1人分)

ごはん 250g(炊きたて)
溶き卵 1個分
豚挽き肉 30g
A 生姜の搾り汁 小さじ1
A 紹興酒 小さじ1
A 白胡椒 小さじ1
長ねぎ 15cm程度(白い部分)
芽菜 小さじ1(塩抜きしてみじん切り)
白絞油 適量
鶏ガラスープ 大さじ2~3
甜麺醤 小さじ2
豆板醤 大さじ1
紹興酒 適量
鶏ガラスープ 少々
※芽菜は四川省の代表的な漬物。代わりに塩抜きした高菜漬けを使ってもよい。

下ごしらえ

ボウルに挽き肉を入れ、Aを加えたら、手でもみ込むようにして、肉全体に味をよくなじませておく。

肉に下味をもみ込むことにより、あとで炒め合わせる甜麺醤の甘味と香りがしっかりと引き立つ。
肉に下味をもみ込むことにより、あとで炒め合わせる甜麺醤の甘味と香りがしっかりと引き立つ。

1 挽き肉を炒める

中華鍋を中火にかけ、鶏ガラスープを入れる。沸騰してきたら、下ごしらえした挽き肉を投入し、全体を混ぜながらほぐし、煮るようにして炒める。水分がなくなってきたら甜麺醤を加えて混ぜ、香りがよく出るまで炒めて別の器にとっておく。

油を引かずに肉から出た脂だけで炒めることで、コクと旨味が生まれる。
油を引かずに肉から出た脂だけで炒めることで、コクと旨味が生まれる。
甜麺醤を加えて甘味をプラスする。
甜麺醤を加えて甘味をプラスする。

2 ねぎに切り込みを入れる

長ねぎを3分の2の深さまで、幅1mmの斜め切りにする。裏返して同じように、斜めに切り目を入れていく。

ねぎを断ち切ってしまわないよう、慎重に包丁を入れていく。
ねぎを断ち切ってしまわないよう、慎重に包丁を入れていく。
ねぎを曲げて、こんなふうに蛇腹状に柔らかくしなればOK。まんべんなく、細かい切り目が入っている証拠だ。
ねぎを曲げて、こんなふうに蛇腹状に柔らかくしなればOK。まんべんなく、細かい切り目が入っている証拠だ。

3 ねぎを刻む

蛇腹状に切ったねぎを、端から小口切りにしていく。

普通のみじん切りよりも、しっとりジューシーになって炒めても乾きにくい。
普通のみじん切りよりも、しっとりジューシーになって炒めても乾きにくい。

4 ごはんに卵を混ぜる

ボウルにごはんを入れ、溶き卵の3分の1を加えて、手でよく混ぜる。

あらかじめごはんに卵液を混ぜてコーティングすると、炒めたときにほぐれやすくなる。
あらかじめごはんに卵液を混ぜてコーティングすると、炒めたときにほぐれやすくなる。

5 豆板醤を炒める

中華鍋を強火にかけ、煙が出るまでよく焼いたら油を加えて鍋全体にならす。油の量は大さじ2が目安。中火にして、豆板醤を加えて炒める。芳ばしい香りが立ってきたら、残りの卵液を入れ、すぐに卵をからませておいたごはんを加えて全体を混ぜ、よく炒め合わせる。

いい香りが出るまで、お玉でかき混ぜながら、焦げないように炒めていく。
いい香りが出るまで、お玉でかき混ぜながら、焦げないように炒めていく。
卵とごはんを加えた後は、一気に炒めて仕上げていく。材料が手元に用意できているか事前にチェックしよう。
卵とごはんを加えた後は、一気に炒めて仕上げていく。材料が手元に用意できているか事前にチェックしよう。

6 ごはんをほぐしながら炒める

鍋肌にごはんをお玉の背で押しつけるように焼き、鍋をあおってごはんをほぐしながら炒める。これを繰り返す。米がパラパラになるまで手早く炒めよう。

お玉を強く押しつけて、ごはんを潰さないよう注意する。
お玉を強く押しつけて、ごはんを潰さないよう注意する。
炒めるうちにごはんがほぐれて全体に豆板醤がなじみ、ツヤと香りが出てくる。
炒めるうちにごはんがほぐれて全体に豆板醤がなじみ、ツヤと香りが出てくる。

7 挽き肉を加える

1の挽き肉と芽菜を加えて全体を混ぜ合わせる。紹興酒、鶏ガラスープを鍋肌から回し入れる。

甜麺醤で甘く調味した挽き肉は最後に加えることで、辛味と香りをまとったごはんと完全に混ざりきることなく、味にメリハリが生まれる。
甜麺醤で甘く調味した挽き肉は最後に加えることで、辛味と香りをまとったごはんと完全に混ざりきることなく、味にメリハリが生まれる。

8 ねぎを加えて仕上げる

3のねぎを加えて全体を混ぜ、さっと炒めれば完成だ。

ひとくち食べればふんわり甘く、後から鮮烈な辛みが追いかけてくる!
ひとくち食べればふんわり甘く、後から鮮烈な辛みが追いかけてくる!

教える人

菊島弘従

菊島弘従

四川料理の名店『趙楊』で料理長を務め、趙楊氏の四川料理を学んだ後、2010年に四谷三丁目に「四川料理 蜀郷香」をオープン。「味と香りにインパクトがある“四川炒飯”は食事の締めにぴったりですよ」とお薦めしてくれました。

店舗情報店舗情報

四川料理 蜀郷香
  • 【住所】東京都新宿区舟町5‐25 TSI FUNAMACHI 2階
  • 【電話番号】03‐3356‐0818
  • 【営業時間】18:00~21:30(L.O.)完全予約制
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】東京メトロ「四谷三丁目駅」より3分
技ありdancyu『チャーハン』
技ありdancyu『チャーハン』
初心者向きのフライパンで炒めるものからプロの新しい味の提案まで全27皿の、詳細なつくり方を紹介。
A4変型 判( 80 頁)
ISBN: 9784833476225
2017年8月29日発売 / 864円(税込)
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文:瀬川慧 写真:久保田健

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瀬川 慧(ライター)

得意分野は料理、ワイン、食文化、旅、歴史など。単行本の企画、編集、執筆に『日本料理 銀座小十』(世界文化社)、『野﨑洋光の野菜料理帳』『里山に生きる「土樂」の食と暮らし』『懐石小室に教わる 一生ものの和のおかず』(家の光協会)、『和食神髄 小室光博』(プレジデント社)などがある。