ポルボローネは焼いた薄力粉で生地を練るので、ほろりとした食感になる不思議な焼き菓子。口の中でサッと溶けた刹那、ナッツのまろやかな香りが広がります。創業当初から「リリエンベルグ」を代表する菓子のひとつです。できたての香りを大切にするレシピを横溝春雄シェフに訊きました。
ポルボローネはスペイン、アンダルシア地方の郷土菓子です。現地ではポルボロンと呼ばれているのですが、日本に伝わったときスペルを読み間違えたことがきっかけで、ポルボローネという名前が定着したと言われています。ホロホロと崩れやすい生地なので、口の中で溶けて消える前に「ポルボロン」と、3回唱えられたら幸せが訪れるという言い伝えがスペインにはあるんですよ。なので、リリエンベルグでは“幸せのお菓子ポルボローネ”という名前で販売しています。日本ではバターを練り込んだ生地がほとんどだけど、本場のレシピではラードを使っています。動物性の油を使うとコクがあって、クセになる味わいになるんですよ。
リリンベルグのポルボローネは、ヘーゼルナッツのプラリネペーストを練りこみます。仕上げにふりかける和三盆糖の淡い甘味と、濃厚なナッツの風味が口の中で広がるんです。ポルボローネの生地を練るときは、必ず焼きたての薄力粉を使います。生地に焼きたての香りが残って、断然おいしい。仕上がりの風味がグッと良くなるから、市販の焼き粉ではなく、ぜひ焼きたての粉でつくってみてください。
ポルボローネをつくる工程は、粉と油分を合わせて成型した生地をオーブンで乾かすだけ。口溶けの良いお菓子なので、紅茶やコーヒーと一緒に食べると一層ナッツの香りが広がります。午後のティータイムや、客人をもてなすときにぴったりの焼き菓子です。
・ 薄力粉 | 250g |
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・ 粉糖 | 90g |
・ 和三盆糖 | 20g(練りこみ用) |
・ シナモン | 1g |
・ 皮付きアーモンドプードル | 80g |
・ 無塩バター | 100g |
・ ショートニング | 80g |
・ ヘーゼルナッツプラリネ | 100g |
・ 和三盆糖 | 適宜(ふりかけ用) |
薄力粉をフライパンで弱火にかける。焦げないようにホイッパーで混ぜながら、きなこ色になるまで煎る。でき上がったら、練りこみ用の220gと、それ以外の打ち粉用とに焼き粉を分ける。粗熱が取れたら、練りこみ用の焼き粉を粉糖、和三盆糖、シナモン、アーモンドプードルと合わせてふるいにかける。無塩バターとショートニングは、室温に戻しておく。
ボウルで無塩バター、ショートニング、ヘーゼルナッツプラリネをなめらかなクリーム状になるように混ぜ合わせる。ふるっておいた粉をすべて加える。
外側から内側に巻き込むようにゴムベラで混ぜ合わせて、生地に粉気がなくなったら、カードを使ってひとかたまりにまとめる。
最初はポロポロとして粉気があるけど、ボウルに押し付けるように混ぜると、粉と油分がまとまりやすいですよ。
生地を70gずつに分割する。まな板に打ち粉(焼き粉)をして、その上で18cmの棒状に伸ばす。生地を一列に並べ、10等分に切り分ける。
太い部分や細い部分がないよう均等な棒状に伸ばすことで、切り分けるときの生地の大きさも揃います。
切り分けた生地を手のひらで丸める。クッキングシートを敷いた天板に並べたら、生地が楕円形になるように人差し指で抑える。
人指し指の付け根の部分で擦り合わせるようにして丸めると、綺麗なまんまるの形になります。
160度に予熱したオーブンで7分ほど焼き、生地がふっくらしてきたら取り出す。粗熱が取れたら、濾し器で和三盆糖をふりかけて、できあがり。
オーブンに入れた生地に、焼き色はつかなくて大丈夫。表面を触ってしっかり乾いていたら、オーブンから取り出しましょう。
ウィーン菓子屋のシンボルでもある「デメル」で、日本人としてはじめて働いた経歴を持つ。帰国後は「中村屋 グロリエッテ」でシェフとして研鑽を積み、1988年に独立。蕎麦好きのあまり、蕎麦打ち教室に通っていたことも。
文:河野大治朗 写真:吉澤健太