
進化を続ける東京の町焼肉。今回ご紹介するのは、40年続いた寒川の名店「明洞」の味を受け継ぎ、新橋で新たな一歩を踏み出した「ニューみょんどん」だ。老舗の仕事や仕入れなど、先代から受け継いだ味を守りながら、仕込みや肉の切り方まで一から学び直した。かつての「明洞」店主・廣瀬宣夫さんも店に立ち、若い二人を支えている。半人前から注文できる気軽さや、独自に仕入れるホルモンなど、新しい店ならではの進化も見逃せない。40年の味を終わらせない。愛情と技術で「明洞」を未来へつなぐ、「ニューみょんどん」の焼肉に迫ります。
2025年6月、東京・新橋でオープンした焼肉店「ニューみょんどん」。その年の1月、神奈川県寒川町で40年間掲げたのれんを畳んだ「明洞(みょんどん)」の味を引き継ぐ形でスタートした。
看板メニューとなる正肉の仕入れは、明洞からそのまま引き継いだ。和牛の特上ハラミ、スーパーカルビ、上カルビ、並カルビという3種のカルビ、そして「明洞ロース」などの仕事も直接教えを乞うた。もちろんタレやカット、客のほとんどが注文する自家製ナムルも明洞そのまま。
相方の大住圭さんとともに店を切り盛りする濵嶋優さんは「オープン前の2ヶ月間、『明洞』の廣瀬宣夫さんにみっちり教わったんですが、当初はまったくついていけませんでした」と当時を振り返る。

老舗の再出発として、継ぐべきものの数は尋常ではない。特に仕込みはメニューの数だけ味がある。前菜の自家製ナムルひとつとっても、以前の味を引き継ぐのは簡単なことではない。基本となるタレの種類は変わらなくても、肉によって微妙に味つけが変わる。
さらに肉のカットなどにも店ごとのスタイルはある。6月の開店当初は、肉の切り出しの体得には至らず、スライス済みの肉を卸して持ってきてもらっていたという。
「明洞の味に近づいたなと思ったのは去年の9月頃です。その頃からは、和牛のタン――黒タンも皮つきで持ってきてもらって、自分たちで皮を引いてカットまで仕事の流れのなかでできるようになっていました」
黒タンはやや厚切りの特上タン(タン元)から上タン(タン中)、ネギタン(タン先)まで余すことなく使う。通常、煮込み材などに回るタン下も、ランチ営業のカレーの肉としてすべて活用される。加熱する人気に焼肉店同士で争奪戦になる黒タンだからこそ、そのすべてをあらゆる形で提供し尽くす。

カルビは3種類。看板のスーパーカルビはやわらかくサシの乗ったヘッドバラ。上カルビは甘く、肉の繊維も印象的なタテバラ、並カルビは肉の味の濃いインサイドスカートというのもうれしい。近年カルビは脂が多いだけの「特上」が敬遠されがちだが、この店の「スーパーカルビ」は肉の繊維がとろけるようで、サシは優しく、タレの乗りもいい。このやわらかさと白飯の相性のよさはもはや「出会いもの」と言ってもいい。
何よりうれしいのが、これらすべてが盛り合わせにできること。しかもその盛り合わせもハーフ注文ができる。1名や2名で訪れても、タン盛り合わせやカルビ盛り合わせが注文できる。日常のちょっとしたぜいたくを叶えてくれる。

タンの盛り合わせはハーフでも特上2枚、上タン4枚、ネギタン4枚。2名で分けたときに割り切れる数で組んである。

実はいまも「明洞」の元店主・廣瀬さんは「ニューみょんどん」の店舗に立っている。現在は第1、第3、第4金曜の15時に店に入り、仕事ぶりや味をチェック。第2週目のみ土曜となるが、その理由は一緒に明洞を切り盛りしていた奥様の真由美さんとともに店に立つからだ。
午後、神奈川の自宅を出る廣瀬さんは15時ごろに店へ入る。17時の開店から21時まで懐かしい常連客などに対応する姿は、長く通う常連客にとって週末夜の楽しみだ。
変化したメニューもある。現在、レバー、シマチョウ、コプチャン、ギアラなどの内臓肉は、香川県の内臓卸からの直接仕入れとなっている。
「内臓は、と畜翌日には店に届きます。問屋を介さない直接仕入れなので鮮度には自信があります」
夜メニューに記載はないが、ランチで提供されるカイノミも注文できる。今後はくり抜きテールやツラミの投入も検討しているという。
味を守り、前進させ、展開させる。週に一度は元店主と常連客を引き合わせ、喜びの輪を広げていく。「ニューみょんどん」はつくづく愛情でできている。

文・写真:松浦達也