
2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、dancyuを長年支えてくれている酒のプロや愛飲家の皆様に、個人的な推し酒をジャンルレスに聞いてみました。いずれも「ぜひ飲んでみて!」と推薦者が熱く語ってしまうチャーミングな酒ばかり。今回は、日本酒ジャーナリスト、ジョン・ゴントナーさんの偏愛酒、福井県大野市の「真名鶴(まなつる)」をご紹介します。
「真名鶴」に出会ったのは約20年前。行きつけの鎌倉の酒販店「高崎屋本店」で特別純米を薦められ飲んでみたら、繊細でソフトながら味わい深い。際立った特徴はないけれど、「ずっと飲んでいられる酒だ」と感銘を受けました。
蔵のある福井の越前大野は地下水がとても豊富で、「御清水(おしょうず)」と名付けられたスポットをはじめ、湧水池が町の至るところにある「水の町」。人口3万人ながら、今も3軒の酒蔵があります。
蔵元の泉惠介さん(62歳)は1988年に実家である蔵に戻り、それまで普通酒だけ造っていた蔵を、一気に全量吟醸酒規格に変えました。500石だった製造量を3分の1にする英断。98年に蔵元、99年には杜氏となり、その初年度に全国新酒鑑評会金賞をはじめ各鑑評会で次々と受賞、業界を驚かせました。泉さんには、酒造りの天賦の才があるのだと思います。

イチ推しは、山廃仕込みの「classic」。少し甘めの、純米らしい良い酒です。どんな料理にも合わせやすく、最初は隠れていた酸や香りが飲むほどに出てきて、どんどん味わい深くなる。いつ飲んでもぶれない安定感があるのもすごい、勇ましい、と思います。
この蔵のモットーは「ベストワンよりオンリーワン。高品質な酒はもちろん、独創的な酒、夢のある酒、物語のある酒を造り続けたい」と泉さん。廃坑を使った長期熟成酒、シェリーの古樽で熟成する大吟醸、白麹を使った酒などに早くから取り組んできたし、ラベルデザインも楽しい。酒の安定感もさることながら、「他の人がやらないことを」という泉さんのチャレンジ精神あふれるアイテムも魅力的で、この蔵から目が離せません。(談)

構成:里見美香 撮影:大志摩 徹