心ふるえる酒2026
【酒よし肴よしの新名店 大阪・阿波座「賽(さい)」】地元流通の普通酒からレアな熟成酒まで。"安くて旨いお宝酒"を燗で楽しむ

【酒よし肴よしの新名店 大阪・阿波座「賽(さい)」】地元流通の普通酒からレアな熟成酒まで。"安くて旨いお宝酒"を燗で楽しむ

2026年日本酒dancyu「出会えてよかった! 心ふるえる酒」特集では、選りすぐりの日本酒を、気の効いた料理と共に味わえる注目の新店をピックアップ。今回は大阪・阿波座「賽(さい)」をご紹介します。

安くて旨い酒はこんなにある! 上撰・佳撰にパック酒、ちょっとないラインナップ

塩入 得由(しおいりとくよし)さんは、海鮮居酒屋や立ち飲みを手がける飲食業の会社を経て、2024年6月にこの店を開いた。前職の頃、熟成酒をきっかけに日本酒に開眼。「温めたらより美味しいやん」と気づいて、深みに入ったと穏やかに笑う。

日本酒
「黒牛」を醸す名手酒造店の「菊御代(きくみよ)」や、同じく和歌山の「太平洋」上撰など「蔵のボトムラインである普通酒が好きなんです」と塩入さん。
日本酒
飾り棚には山陰の酒が多く、「よく知られた銘柄の中でも、ちょっとクセのある酒を置いてます」。半合500円~。

魚中心の品書きを見れば、「鮮」の項に連なる文字がもう飲ませる。アジのりゅうきゅうになめろう、真鯛の酒盗オイル。天然ブリは“津軽酢掛け”ときた。すりおろしたりんごの酸でブリの脂を程よく抑えるセンスに脱帽だ。いや、シャッポを脱ぐのが早すぎた。この一品に合わせて出てきたのは、53℃の「天穏」佳撰だった!

料理
皮目を炙ったブリの脂を和らげるのが、塩入さん命名の“津軽酢”。すりおろしたりんごに薄口醤油や米酢、煮きり味醂、砂糖を合わせた、穏やかな甘酸っぱさがいい。意外や一皿のまとめ役はクレソンの青い風味。900円。
料理
「熟成なのに搾ったら酒が出てくるくらいフレッシュ!」と、塩入さんが惚れ込む「天穏」の酒粕の旨味を前面に。牛スジ肉を白味噌などで味つけし、炊き上げている。650円。
料理
軽く塩で締めたタラは、ほくほく感と雑味のない味わいが出色。マヨネーズに玉ねぎ、ゆで卵、奈良漬、蜂蜜を合わせたタルタルが飲ませる。800円。

「安くて旨い酒はこんなにあるぞ! と伝えたくて」。地元を中心に流通する普通酒やレアな熟成酒もスタンバイ。「天穏」のパック酒を仕入れることもあるという。「最初にハマったのが『天穏』で。酒器も小島達也杜氏のお気に入りを使ってます」。

塩入得由さん
塩入得由さんは、「飲んでいる時間がいい時間になる」燗推しで、備前焼に湯を張り、燗をつける。

53℃という細かい温度は実は「香りを頼りに、温度計を使わずに燗つけするので、たぶん、それくらいです(笑)」と塩入さん。燗の温度はアテや盃の進み具合を見ながら、微妙に変えているのだそう。普通酒の燗酒を味わう時間は、難しくなく穏やかで、どこか懐かしい。そんな飲み方を愉しめる日本酒党ならば、塩入さんの待つカウンターは特等席になる。

店内
すっきりとしたモダンな空間は、6席と4席の二つのカウンターが中心。

店舗情報店舗情報

  • 【住所】大阪府大阪市西区阿波座1‐15‐19
  • 【電話番号】06‐6760‐4182
  • 【営業時間】11:30~13:30(L.O.)、17:00~23:00(L.O.)
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】地下鉄「本町駅」より5分、「阿波座駅」より8分
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A4変型判(160頁)
2026年2月5日発売/1,800円(税込)

文:中本由美子 撮影:東谷幸一

中本 由美子

中本 由美子 (編集者・ライター)

関西を中心に活動する編集者・ライター。関西の食雑誌『あまから手帖』、和食専門WEBマガジン「WA・TO・ BI─和食の扉─」編集長を経て、2025年に独立。和食&日本酒党。

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