心ふるえる酒2026
【酒よし肴よしの新名店 曳舟「蕎麦割烹 ながの」】在来種自家製粉の蕎麦ときらめく蕎麦前で、極上の下町飲みを

【酒よし肴よしの新名店 曳舟「蕎麦割烹 ながの」】在来種自家製粉の蕎麦ときらめく蕎麦前で、極上の下町飲みを

2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、選りすぐりの日本酒を、気の効いた料理と共に味わえる注目の新店をピックアップ。今回は曳舟「蕎麦割烹 ながの」をご紹介します。

和食も蕎麦も本気です!

目の前に運ばれた前菜盛りに、酒飲みなら誰しもが目を輝かせてしまうだろう。蕎麦前の定番・鰊煮をはじめとする手の込んだ酒肴の数々は、元々が和食の料理人であり、千歳烏山「東白庵かりべ」で蕎麦職人としての腕を磨いた店主・永野清二さんのキャリアを凝縮したような充実の内容だ。前菜を一つ一つ味わいながら、次はどの日本酒を合わせようかと杯を重ねてしまう。

前菜8種盛り
前菜8種盛りは日替わり。定番である才巻海老の味噌漬け焼き(上段右)と桜海老の磯辺揚げ(上段中)、5日間かけて仕込む鰊(にしん)煮(中段中)をはじめ、ごぼうと助子の炒り煮(下段中)、鯵のなめろう(下段右)など9品が並ぶ。1,980円。

「蕎麦割烹 ながの」は、下町の情緒が今も残る曳舟で、夫婦で切り盛りするアットホームな店。出てくる料理は凛として本格的ながら温かみが感じられ、肩肘張らずに楽しめる。たとえば玉子焼きに銀餡をかけるのは、「ちびちび飲みながらでも、冷めにくいため最後まで卵の美味しさやだしの風味を損なわずに食べていただける」(永野さん)といった心配りの賜物だ。

玉子焼き
店の名物、玉子焼き。「ふわっと巻ける限界まで、だしをたっぷり加えて焼いています」(永野さん)という玉子焼きに銀餡をかける。燗酒と合わせて極楽気分に。調理に時間がかかるため、注文時に確認を。1,100円。

その姿勢は日本酒のセレクトにも。天ぷらに合わせた山形「十水(とみず)」特別純米は穴子の穏やかな旨味をそっと押し上げ、三重「天遊琳」特別純米の燗は炭火で焼いた椎茸の香りを膨らませる。酒そのものが主張するのではなく、あくまで料理を引き立てる食中酒を厳選する。

日本酒
日本酒は写真にあるレギュラー銘柄に加えて、日替わりの銘柄4、5種が品書きに並ぶ。「すっきりときれいな酒から、骨格のしっかりした燗酒向きの酒まで、満遍なく揃えるようにしています」(永野さん)。一合990円~。
天ぷら盛り合わせ
天ぷら盛り合わせは、旬の食材を胡麻油(白)でからりと揚げる。この日は穴子がメイン。1,870円。
椎茸の焼き物
椎茸の焼き物は、肉厚な冬菇(どんこ)を割り醤油で焼き上げる。噛めばむせ返るような椎茸の風味が口の中に長く残り、酒を呼ぶ。660円。

せいろ、田舎そば、そばがき、すべて粉を替えています

焼き物や天ぷらなど確かな腕前が窺える料理をつまみにさらに飲み進めて、いよいよ締めの蕎麦へ。爽やかな味わいのせいろや、挽きぐるみの田舎そばもいいが、「蕎麦の香りを存分に楽しむなら、釜揚げもお薦めですよ」と永野さん。この日は千葉“成田秋そば”が使われ、新蕎麦ならではの青い香りと自然な甘味が広がって、腹も心も満たされる。

そばがき
香りの強い長崎“対州蕎麦”を使うそばがきはふわとろな新食感。キリッとした割り醤油をつけて食す。1,320円。
蕎麦
蕎麦職人としての腕前を存分に味わう釜揚げそば。「一口目はぜひ塩で」(永野さん)。990円。
蕎麦
蕎麦は在来種の国産品を店内で自家製粉し、メニューや時季により使い分ける。つけつゆには本枯節と荒節でやや強めなアタックを、かけつゆには宗太節と鯖節で重層的な旨味と風味を立たせるように、とだしを替える。

職人としての矜持に裏打ちされた、柔和なもてなし。心地よい酔い加減を土産に、下町を後にした。

店内
曳舟駅からしばらく歩いた水戸街道沿いに「蕎麦割烹 ながの」はある。
店主の永野清二さん
店主の永野清二さん。「日本橋 葵」など日本料理店で約20年研鑽を重ね、その後「東白庵かりべ」で料理長を務めた後に独立した。

店舗情報店舗情報

蕎麦割烹 ながの
  • 【住所】東京都墨田区東向島2-20-6
  • 【電話番号】03-6675-0167
  • 【営業時間】11:30~14:00(L.O.) 17:30~21:00(L.O.)
  • 【定休日】月曜 火曜 他に不定休あり
  • 【アクセス】東武スカイツリーラインほか「曳舟駅」より5分
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2026年2月5日発売/1,800円(税込)

文:宮内 健 撮影:三東サイ

宮内 健

宮内 健 (編集者、ライター)

1971年、東京生まれ。音楽誌『bounce』『ramblin'』編集長を歴任し、フリーランスの音楽ライター、編集者として長らく活動している。2010年以降「食」や「酒」に関してもテリトリーを広げ、2018年から2024年まで『dancyu』編集部に在籍。数々の特集記事の企画編集や執筆を手掛けた。

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