
柑橘サワーとめくるめく創作点心の店や、ナチュラルワインと小皿中華に唸る一人飲み酒場、さらには中国茶ハイと自家製だれで魅了するバルまで! この夏、最もアツい点心酒場をご案内。今回は、東急大井町線の荏原町駅から程近く、住宅街の中に佇む点心バル「マルバツサンカク」です。
「焼売と餃子が好きだった」
戸越銀座商店街で惣菜店を営む家に生まれ育った篠嵜瑛(しのざき・あきら)さんが、20歳で点心中心の料理店を志した理由は明快だ。中華料理店や餃子専門店で腕を磨き、一昨年26歳で地元にて自店をオープン。点心道をまっしぐらに突き進んできた篠嵜さんの料理は、どこか一筋縄ではいかない面白みがある。


たとえば、蒸籠に並ぶ点心4種の盛り合わせ。ふんわり食感の豚焼売にはニョクマム入り粒マスタードだれを、くわい入りの餅米肉団子には甘口の山椒ソースを、と4種4様の創意あるたれが添えられる。肉汁と肉々しさのバランスを計った焼売は、それだけでも満足度が高いが、たれをつけた途端、予想外の複雑な味が重なり合って広がるのだ。
聞けば、「たれづくりが趣味なんです」とうれしそうに篠嵜さん。チリソースや味噌だれなど、30種以上もの調味料を自作。それらを縦横無尽に掛け合わせて「僕だけの味」を生み出している。むしろ、常にたれやソースありきで料理を考えるというから実に興味深い。


コクがあって複雑。そんな点心にバチッとはまるのが、中国茶ハイだ。鉄観音に凍頂烏龍茶。良質の茶葉を驚くほど贅沢に使って抽出した味は、香り高くすっきりとして、料理の油をきれいに切ってくれる。となると、赤ワインソースで味わうラム餃子や、醤がからみ合う麻婆豆腐なども注文したくなるというもの。酒がつまみを、つまみが酒を呼ぶ、正しきループが生まれる。
今後、篠嵜ワールドの味はさらに進化していきそうで期待は尽きない。




文:安井洋子 撮影:長野陽一