私の行きつけ~住む町の旨い店案内~
【知りたい、神戸と芦屋の行きつけ⑧】洋菓子から古典菓子まで。つくり手の顔が浮かぶ甘いもの『マビッシュ』

【知りたい、神戸と芦屋の行きつけ⑧】洋菓子から古典菓子まで。つくり手の顔が浮かぶ甘いもの『マビッシュ』

その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2026年春号では、芦屋「メツゲライクスダ」楠田裕彦さんに、地元神戸と職場がある芦屋周辺の愛すべき店を案内してもらいました。

華やかさより、誠実なおいしさ。村田シェフが焼く菓子に漂う存在感

芦屋の閑静な住宅街に店を構える「マビッシュ」。

ショーケースには季節の生菓子が並び、壁際には40種類を超える端正な焼き菓子が並ぶ。華やかさを競うのではなく、一つひとつが静かに存在感を放つ。

「村田博シェフの味づくりは、洋菓子からフランスの古典菓子まで守備範囲が広いんです」。そう話すのは、「メツゲライクスダ」の楠田裕彦さん。

一方で、村田シェフが大切にしているのは、意外にもシンプル。「目指しているのは、普通においしいこと。そして素材らしさを生かすことです」。

村田シェフ
村田シェフは、大阪のホテルや神戸のパティスリーを経て、2005年「モンプリュ」開業時から11年間勤務。スーシェフを経て独立。現在は、現場に立ちながら、シェフお勧めのお菓子を学ぶ、お菓子教室も不定期で開催している。

その言葉は、一つひとつのお菓子に表れている。
例えば、シュー・ア・ラ・クレーム。しっかりと焼き込んだ香ばしい生地は、外は軽やかで、中はクレープのようにしっとり。カスタードクリームほか2種類のクリームが重なり、奥行きのある味わいを生み出している。

シュー・ア・ラ・クレーム
シュー・ア・ラ・クレーム350円。クレーム・ディプロマットにバタークリームを加えた深みのある味わい。

焼き菓子もまた、この店を訪れる楽しみの一つだ。
常時40種類以上をそろえながらも、大量には焼かない。一度に少量ずつ焼き上げることで、つくりたてならではのおいしさと香りを大切にしている。

楠田さんにとって「マビッシュ」は、特別な日に訪れる店ではない。スタッフの誕生日や、少し疲れた日のご褒美に。何気ない日常の中で自然と思い浮かぶ一軒だという。

焼き菓子
「毎日、こまめに焼きます」と、フィナンシェやサブレなど、少量多品種の焼き菓子が並ぶ。効率よりも大切にしているのは、地元客の日常に寄り添うこと。おやつにも手土産にも応えられるよう、今日も焼き続ける。

「重すぎず、エッジが立ちすぎてもいない。そのバランスが絶妙なんです。そして何より、つくり手の顔が浮かぶお菓子なんですよ」。

素材と誠実に向き合い、食べる人の日常にそっと寄り添う。そんなやさしいおいしさが、家の近くにある幸せを、この店は教えてくれる。

外観
2017年開店。芦屋マダムはもちろん、飲食関係者からの評判も高い。
ショーケース
ショーケースには常時15種ほどの生菓子が並ぶ。

教える人

「メツゲライクスダ」店主 楠田裕彦さん

「メツゲライクスダ」店主 楠田裕彦さん

神戸市生まれ。ドイツ・フランスで修業後、鹿児島「クスダハム工房」を経て2004年、芦屋で独立。創業20年目となる24年、東京「麻布台ヒルズ」に新ブランドを出店。

店舗情報店舗情報

マビッシュ
  • 【住所】兵庫県芦屋市大原町20‐24
  • 【電話番号】0797‐61‐5670
  • 【営業時間】10:00〜19:00
  • 【定休日】火曜 水曜
  • 【アクセス】JR「芦屋駅」より5分
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文:船井香緒里 写真:福森クニヒロ

船井 香緒里

船井 香緒里 (フードライター)

福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。料理専門誌やカルチャー誌、ウェブなどの編集・執筆を行う。食の取り寄せサイトや飲食店舗などのキュレーションを手がけるなど、食を軸としながら縦横無尽に展開。暴飲暴食を日課とし、ジョギングとロードバイクにて健康維持。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。