
その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2026年夏号では、「ラ・カーサ・ディ・テツオ オオタ」や「マードレ」を営み、アマゾンカカオを使った料理やスイーツが大人気の太田哲雄さんに軽井沢エリアのとっておきを案内してもらいました。
軽井沢駅からしなの鉄道で20分ほどの小諸駅周辺は太田さんが注目するエリア。
「以前はシャッター街で心配になるほどでしたが、ここ数年、おしゃれな店が増えているんです」(太田さん)
2年前にオープンした「中華ビストロTAICHI」はその一軒だ。店主の佐野太一さんは東京や横浜で修業後、軽井沢のハルニレテラスにある「希須林」で15年にわたり腕を振るってきた。満を持して開いたこの店では中華の基本は守りながらも、「お酒と一緒に気軽に楽しめる料理を出したい」と独創的なアレンジがされている。よく知る料理でも驚きがあって、これがなんとも楽しいのだ。



好例はレバニラ炒め。食材はレバーとニラに絞り込み、別々に火を入れてフレンチのような盛り付けがなされている。炒め合わせてないからレバーのピュアな旨味とニラの柔らかさや甘味が鮮明になり、これぞレバニラ!と膝を打ちたくなる。
酢豚にしても豚肉と蓮根のみという潔さ。クミンを合わせるのは異色だが、オリエンタルな香りが無性に酒を呼ぶから堪らない。〆に人気の土鍋の麻婆豆腐もしかりで、骨太ながらも青山椒の香りが清々しい。



「どの料理も油を無用に使わず、きれいな味に仕上げているし、価格も手頃だから1人でも行きやすい。独自の世界観が打ち出されているところにも惹かれますね」と太田さん。
軽井沢に泊まって夜は小諸の中華ビストロで一杯。そんな過ごし方が増えていきそうだ。


長野県白馬村生まれ。イタリア、スペイン、ペルーで通算10年以上の経験を積む。2019年から軽井沢に拠点を構え、レストランのほか食堂兼売店「マードレ」を運営。アマゾンで出合ったカカオの普及にも力を注ぎ、自身でも多彩なスイーツを開発。
文:上島寿子 写真:鈴木泰介