私の行きつけ~住む町の旨い店案内~
【知りたい、神戸と芦屋の行きつけ⑥】デザインと料理が響き合う場で、テロワールと空間美に没入『Eatery & Wine by Vague Kitchen(ヴァーグキッチン)』〜シャルキュトリー職人・楠田裕彦さんの紹介

【知りたい、神戸と芦屋の行きつけ⑥】デザインと料理が響き合う場で、テロワールと空間美に没入『Eatery & Wine by Vague Kitchen(ヴァーグキッチン)』〜シャルキュトリー職人・楠田裕彦さんの紹介

その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2026年春号では、芦屋「メツゲライクスダ」楠田裕彦さんに、地元神戸と職場がある芦屋周辺の愛すべき店を案内してもらいました。

建築、空間、デザイン、料理。そのすべてが一つの物語になる。

神戸・海岸通にあるギャラリー「Vague Kobe(ヴァーグコウベ)」。
世界を舞台に活動するデザイナー・柳原照弘さんが主宰する「Teruhiro Yanagihara Studio」の日本拠点であり、国内外のクリエイターやアーティストが集う場所として知られている。

その上階にある「Eatery & Wine by Vague Kitchen」は、ギャラリーに併設されたレストランという枠を超え、空間、デザイン、料理が一つの体験としてつながる特別な場所だ。

柳原さんと楠田裕彦さん
柳原さん(左)は、フランスのアルルと神戸を拠点に、プロダクトから空間まで国境を超えたプロジェクトを多数手掛ける。2023年夏、クリエイティブな実験の場として「Vague Kobe」を開いた。
入口
昭和13年(1938)に、旧チャータード銀行の神戸支店として竣工。歴史的建造物であるチャータードビル内にギャラリーはある。
ギャラリー
ギャラリーでは今後も、アーティストや作家とコラボレーションしていくという。

「柳原さんは、地域に根ざすということを、自身の視点で徹底して形にしている。その思想が、デザインだけでなく料理にもきれいにつながっているところに惹かれます」。そう話すのは、「メツゲライクスダ」の楠田裕彦さん。

厨房を預かるのは、フランス料理と和食の経験を持つオーストラリア出身のシェフ・サムさん。港町・神戸という土地の歴史や風土、多様な文化が交差する背景を読み解きながら、土地の食材を用いて一皿を組み立てていく。

その世界観を象徴するのが、「山のヌードルヴァーグ スパイス鹿肉ラグ」。
日本のうどんと南イタリアのパスタを思わせる、自家製ならではの力強い麺。そこへ、鹿肉のラグーの深い味わいと香り高いスパイス、自家製ラー油が重なり、和洋の枠を軽やかに越えていく。

山のヌードルヴァーグ スパイス鹿肉ラグ
シルクロードから伝わる麺文化に着想を得た、山のヌードルヴァーグ スパイス鹿肉ラグ3,200円。デュラムセモリナ粉と淡路島の塩を用いた自家製麺を使用。

「単に料理がおいしいだけではないんです。空間があり、デザインがあり。その土地を見つめる思想があり、最後に料理へとつながっている。その一貫した世界観が本当に素晴らしい」。楠田さんがそう語る理由は、一皿の味だけでは説明できない。

料理を味わいながら、建築や家具、器、光の入り方までが自然と視界に入り、そのすべてが心地よく調和している。
「ギャラリーレストランとして見ても、関西ではとても稀有な存在だと思います」。

食事をするというより、一つの作品世界に身を置くような時間。
そんな体験ができる場所だからこそ、楠田さんは何度も足を運びたくなるのだろう。

店内
店内には異国のダイニングを訪れたような穏やかな空気が流れる。
鰆炙り、フィンガーライム
鰆炙り、フィンガーライム1,500円。
グロッサリー
施設内には、日常に豊かな体験を提案するグロッサリーも併設。
自家製ピクルスなど
クラフトジン蒸留所「ストックホルム ブランネリ」とコラボしたジン、自家製ピクルスなど物語性のある品が揃う。

教える人

「メツゲライクスダ」店主 楠田裕彦さん

「メツゲライクスダ」店主 楠田裕彦さん

神戸市生まれ。ドイツ・フランスで修業後、鹿児島「クスダハム工房」を経て2004年、芦屋で独立。創業20年目となる24年、東京「麻布台ヒルズ」に新ブランドを出店。

店舗情報店舗情報

Eatery & Wine by Vague Kitchen
  • 【住所】兵庫県神戸市中央区海岸通9‐2 チャータードビル屋上階
  • 【電話番号】080‐9308‐0759
  • 【営業時間】12:00〜18:00
  • 【定休日】火曜 水曜 木曜
  • 【アクセス】JRほか「三宮駅」より10分
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2026年3月6日発売/1,500円(税込)

文:船井香緒里 写真:福森クニヒロ

船井 香緒里

船井 香緒里 (フードライター)

福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。料理専門誌やカルチャー誌、ウェブなどの編集・執筆を行う。食の取り寄せサイトや飲食店舗などのキュレーションを手がけるなど、食を軸としながら縦横無尽に展開。暴飲暴食を日課とし、ジョギングとロードバイクにて健康維持。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。

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