
2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、dancyuを長年支えてくれている酒のプロや愛飲家の皆様に、個人的な推し酒をジャンルレスに聞いてみました。いずれも「ぜひ飲んでみて!」と推薦者が熱く語ってしまうチャーミングな酒ばかり。今回は、奈良県天理市の酒販店「登(のぼり)酒店」店主・登 和哉さんの偏愛酒、愛知県愛西市の「義侠(ぎきょう)」をご紹介します。
初めて蔵を訪れ、蔵元の山田昌弘さん(44歳)に酒造りの姿勢を聞いたとき、鳥肌が立ちました。武骨で誠実、硬派。こういう蔵を残していかなければと強く思いました。
「義侠」は、今のトレンドとは異なる、実直な路線を歩む蔵。低アルや甘酸っぱさのような“とっつきやすさ”はないけれど、米の旨味を感じられる、飲み飽きしない質実剛健なお酒です。90年代から銘酒として名が轟いていましたが、うちの店とのご縁はまだ7年ほど。「原料に勝る技術なし」と、原料である米をとにかく大切にする姿勢に徹している蔵です。
前蔵元の山田明洋さんの頃から山田錦の名産地・兵庫県東条地区との関係を築き、東条の米を未来に残すべく、蔵で使う山田錦の全量が特A地区産。全量純米蔵で酵母はほぼ9号のみ。自社精米の手洗いで、米のよさをシンプルに引き出す醸造をしています。

うちの店で仕入れるのは、生原酒と熟成酒が中心。義侠は「1回火入れ+冷蔵貯蔵」が基本スタイルなので、生酒はオーダーした分だけ詰めてくれる方式です。全体にほぼ原酒で、17度前後。
「重たい熟成酒にはしたくない」と、まろやかで、まとまりのある味わい。熟成酒のバリエーションは圧巻です。一口飲んでインパクトのある酒ではありませんが、その先に酒本来の米の味わいがある。二杯三杯と盃が進み、毎日飲みたくなる酒。今、造りは若手7人で担っていますが、蔵元をはじめ全員が実に堅固に“義侠スタイル”を貫いています。若い飲み手にも、しばらくご無沙汰の愛酒家にも、今ぜひ飲んでほしいお酒です。(談)

推薦:登和哉 構成:里見美香 撮影:塩崎聰