日本全国出張ひとり飲み
【新潟・新潟駅でひとり飲み】新潟愛が深まる酒、食、熱いもてなし

【新潟・新潟駅でひとり飲み】新潟愛が深まる酒、食、熱いもてなし

いこえる夜更けはもちろん、新潟生まれの数多の美酒と美味を朝7時から楽しめるパラダイスあり。地元民も足繁く通う新潟の駅ビル内「Niigata Food Campus SUZUVEL & TABI BAR」は、新幹線の最終発車のぎりぎりまでめいっぱい幸せにひたりたくなる。

新幹線の改札から徒歩2分の桃源郷

新潟県は約90軒の日本酒蔵が点在する、日本随一の銘醸地。JR新潟駅の駅ビル「CoCoLo新潟」は、立ち飲みを含めて一杯を楽しむ場所に事欠かないが、なかでもぜひ立ち寄っていただきたいのが、新幹線西口改札から徒歩2分の「Niigata Food Campus SUZUVEL & TABI BAR」だ。

「JR東日本ホテルメッツ新潟」の1階、南口の広場に面したガラス張りの店は一見、洒落たカフェに見える。実際、カフェとしても人気の的なのだが、200種類以上の日本酒を揃えている上、朝7時から23時まで営業という呑兵衛小躍りの場所なのだ。冷蔵庫に並ぶ酒瓶や、酒の名が小さな文字でぎっしり記されたメニューを見れば、喝采のラッパが脳内に響きわたる一方で、幸せすぎてどこから攻めればいいのかと悩むだろう。そんな迷える呑兵衛を救ってくれるのが店の要的存在、くぼケンの愛称で親しまれている「おいしいナビゲーター」の久保田健司さんだ。

新潟の酒といえば「淡麗辛口」の決まり文句を思うかもしれないが、時代とともに進化、昇華を遂げ、のど越し良い飲み口ながら味わい深し。奥行きのある立体感や酸の煌めきを感じるなど、ひと言ではくくれないバラエティに富んだ世界が広がる。「おいしさだけではなく酒蔵や蔵人、地域の物語を伝えたい」というくぼケンさんが語る、各蔵の最新酒事情を伺えば、好奇心を刺激されて未知の酒へと探訪が進む。酒類のラインアップが増えているため、「八海山」「久保田」「越乃寒梅」といった知名度の高い銘柄であっても発見は多い。常連さんから旅人まで県内外から訪れるひとり客は多く、くぼケンさんを介して会話が生まれれば、ひとり飲みのひとときはいっきに賑わいを増して輝きはじめる。

日本酒
3列に酒瓶が並ぶ冷蔵庫の探索だけでも、愉快に時間は過ぎていく。このほかメニューには、レアな希少酒も。
日本酒
新潟市内に限っても写真の「笹祝」「越乃寒梅」など10軒以上の酒蔵が点在。下越、中越、上越、佐渡島など、地図を眺めながら次の出張を思うのもいい。手前は、鶏皮と阿賀野の銘柄豚「純白のビアンカ」の旨味がしみ出た味噌煮込み。
酒と料理
佐渡島の「金鶴」と「選べるおつまみセット」。この日の選択は奥左から「玄米こうじ味噌とサーモンのなめろう」「あがの市銘柄豚純白のビアンカのローストポーク」「醤油麹とスパイスMIXで食べるたっぷり葱の焼きサバ」、手前左は「糸魚川旨口いかの塩辛」、右「クリームチーズと長岡摂田屋の醤油麹」。このセットだけでも、満足度は高い。
酒と料理
糸魚川市の「月不見の池」と、出汁を含ませた車麩を揚げた、むっちりした食感がたまらない「三条車麩のタレカツ」。
惣菜
ショーケースには旬の食材を主役にした惣菜が常時10種以上並び、一品からオーダーできる。十六穀米、玄米、自家製酵母パンから主食を選び惣菜と組み合わせる、ご飯メニューにもそそられる。

酒のおかわりを促す、新潟尽くしの酒肴

「糸魚川旨口いかの塩辛」「玄米こうじ味噌とサーモンのなめろう」「クリームチーズと長岡摂田屋の醤油麹」をはじめ、ネーミングにも引きつけられる酒肴もまた、新潟を前面に打ち出した魅惑の宝箱。特産品の車麩を新潟のソウルフードであるタレカツ風に仕立てるなど、郷土の伝統食をアレンジした品々も面白い。そして、すべてがすばらしく&たまらなく旨い。酒と合わせれば、たとえひとりでもご機嫌ご満悦の表情をおさえられなくなるはずだ。逸品ぞろいなのでこれまた悩ましいが、好みの5品を小盛りにしたセットメニューがあるのがうれしいではないか。ひとりでも存分に、プチ宴会モードが楽しめる。

店の一角には惣菜が多数並ぶショーケースがあり、食事を楽しむ人も多いのだが、そちらもつまみとして注文できるのがさらなる魅力。テイクアウトにも対応しているので、胃袋の許容量を超えるなら、帰りの新幹線のつまみやホテルでの夜食用に求めるのもいい。

食に関してもくぼケンさんの語りがおいしさを彩る上、旅人だとわかれば話題は歴史ある市内の花街・古町ほか各地の案内にも広がっていく。飲みながらページをめくれる、酒や地域の関連本は多数。一杯、また一杯とグラスが進むうち、新潟情報が自然と蓄積され、あちらこちらに宝探しに出かけたくなる。

酒と料理
1548年創業の吉乃川と、1923年創業、柿の種の元祖・浪花屋製菓。長岡市の老舗のコラボ「吉乃川 浪花屋の柿の種に合う日本酒」は、文字通り絶妙なコンビネーション。
店内
オリジナルの発酵調味料やスイーツなどがひしめき合う棚もお見逃しなく。
店内
「新潟Tシャツ委員会」によるユニークなデザインのTシャツにも、財布の紐が緩む。
店内
新潟の酒と食の最新事情を網羅した「新潟の酒蔵&まちめぐり」も、先々の出張のためにぜひ入手を!

すべてのもてなしに込められた地域への熱い思い

この店を営むSUZU GROUPは、飲食、食品開発、観光、教育など幅広く事業を展開。「ローカルアップデート」をコンセプトとして、時代の流れに応じた形で新潟の伝統文化を守り、育て、発信してきた。その一つ、発酵を柱にした調味料の数々はSUZUVELの料理に使われている上、店内でも販売。ほかにも店内には心惹かれる新潟アイテムが並ぶので、心身が潤った後は土産を探すのもおすすめだ。

アルコール類は日本酒以外にもワイン、クラフトビール、自家製発酵フルーツを使ったサワーなど幅広く、時間が許されるなら飲み放題コースもある。この店の魅力を知ればしるほど、じっくり腰をすえてしっかり飲み食いする再訪を願うはずだ。駅ナカからなら、ホテルメッツ2階のロビーからエレベータに乗るとスムーズ……と近道を記しておきたいのは、2025年12月現在、外壁工事によりビル全体がカバーで覆われており、ガラス張りの外観がわかりづらいため。2026年春には工事終了の予定なので、その後は駅南口を出てすぐに看板が目に入るだろう。

いずれにしても改札までは近いので、切符を確保して発車時刻の5分前までねばる常連さんもいるという。筆者の場合は初訪問時にあまりにも楽しすぎて、予定の時間を大幅にオーバー。新幹線を3本逃した。そのひとときが忘れられず、佐渡島出張帰りに再訪。「おかえりなさい」というくぼケンさんの言葉に迎えられ、最後は改札まで全力疾走となった。

外観

店舗情報店舗情報

Niigata Food Campus SUZUVEL & TABI BAR
  • 【住所】新潟県新潟市中央区花園1-96-47 CoCoLoメッツ館
  • 【電話番号】025‐282‐7613
  • 【営業時間】7:00~23:00 (平日L.O.22:00、週末祝前日L.O.22:30) 
  • 【定休日】定休日は館に準ずる。
  • 【アクセス】JR「新潟駅」より徒歩約1分

SUZUVEL Instagram
https://www.instagram.com/suzuvel_foodtrip/

TABIBAR Instagram
https://www.instagram.com/tabibarandcafe/?hl=ja

文:山内史子 写真:松隈直樹

山内 史子

山内 史子

青森県出身、紀行作家。一升一斗の「いっとちゃん」と呼ばれる超のんべえ。全都道府県、世界40ヵ国以上を巡り、昼は各地の史跡や物語の舞台に立つ自分に、夜は酒に酔うのが生きがい。著書に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)など。2025年8月、新刊「青森ほろ酔い旅」(ものの芽舎)を上梓。