私の行きつけ~住む町の旨い店案内~
【欲しい、京都に行きつけ】薄味で美味。その日の気分で、好きなものを選べるアラカルト割烹『つろく』 ~料理家ウー・ウェンさんの紹介

【欲しい、京都に行きつけ】薄味で美味。その日の気分で、好きなものを選べるアラカルト割烹『つろく』 ~料理家ウー・ウェンさんの紹介

その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2025年夏号では、京都と東京の二拠点生活をする、料理家 ウー・ウェンさんに京都を案内してもらいました。

端正な味づくりが冴えるアラカルト和食

二条通から細い路地を抜けたところにある「つろく」。京料理の名店「游美」の隣に、一品料理を気軽に楽しめる姉妹店として2020年に開店した。「この京都らしいアプローチが非日常の世界へ誘ってくれます」とウーさんはうれしそう。

外観
石畳を進みゆき細路地の奥へ。閑静なロケーションにあるので、隠れ家的な雰囲気も堪らない。
外観
石畳を進みゆき細路地の奥へ。閑静なロケーションにあるので、隠れ家的な雰囲気も堪らない。

弧を描くカウンターに立つのは、新橋にあった名店「京味」で腕を磨いた料理長の上田健登さん。「和食の中心である京都の味を極めたい」とこの地へ。ウーさんがここを推す理由は、「単品をその日の気分で味わえるんです。好みの料理を、お気に入りのお酒と共に。ちょっとずつあれこれ楽しむって最高じゃないですか」。

卯の花炒り煮700円。
卯の花炒り煮700円。
ひすい茄子500円。
ひすい茄子500円。
鯛のお造り1,000円。
鯛のお造り(時価)。

品書きには、はも造り、ひすい茄子など旬味を中心に50品ほど。「どの品も潔いくらい薄味で、素材の味がすっと浮かび上がっています」。

お品書き
お品書きにはお造り・前菜・椀物・蒸し物……と、割烹のコース料理の献立のような並びで、アラカルトメニューが揃う。「あれもこれも食べちゃうから、ご飯ものまでたどり着かない日もあるんですよ」とウーさんは微笑む。

グジの椀物であれば真昆布と利尻昆布を用い、マグロ節で奥行きのある味わいに。「何のだしかわからないけれど美味しい、を目指しています」と上田さん。

グジと煮麺
椀物はグジと煮麺3,000円。
「尾鈴山蒸留所」のウイスキーを使ったハイボール
「尾鈴山蒸留所」のウイスキーを使ったハイボール1,500円。
日本酒やワインはもちろん、ウイスキーやジンも取り揃える
日本酒やワインはもちろん、ウイスキーやジンも取り揃える。作り手のエピソードと共に味わいたい。

そんな割烹を思わせる端正な品々があるかと思えば、「卯の花炒り煮」といった素朴な一品も。「猪肉の油で、ゴボウやコンニャクなど具材を炒め、『近喜』の豆腐からでたおからに、みりんを少しだけ加えています」と上田さん。豆腐の質朴な甘み、ほんのりコクのある味わいに続き、黒七味の香りがふわりと漂う気品に満ちた味わいだ。

店内
弧を描くカウンターは「何人かで訪れても顔が見えて会話が弾みます」。

「お客さんの好みに合わせて加減もします」と、信楽雲井窯の土鍋で炊き上げる白ご飯も絶品。「私は硬めでね。繊細なちりめん山椒との相性は京都一ですよ」と嬉しそうに話す、ウーさんの心を惹きつけてやまない。

信楽雲井窯の土鍋で炊き上げる白ご飯
信楽雲井窯の土鍋で炊き上げる白ご飯1,000円(2合)。「ご飯につくお漬物も素晴らしくて。自家製のたくあんの薄さは感動的!ご飯と見事に調和しています」。
信楽雲井窯の土鍋で炊き上げる白ご飯
信楽雲井窯の土鍋で炊き上げる白ご飯1,000円(2合)。「ご飯につくお漬物も素晴らしくて。自家製のたくあんの薄さは感動的!ご飯と見事に調和しています」。
ウーさん
ツヤッツヤのご飯の上に、ちりめん山椒や、牛肉しぐれ煮をのせてハフハフ頬張るウーさん。
カウンター席
ゆるくカーブを描くカウンター席。バックカウンターにはレンガを配し、どことなく和モダンな空気感が心地よい。

教える人

料理家 ウー・ウェンさん

料理家 ウー・ウェンさん

北京生まれ。1990年に来日。料理研究家としてクッキングサロンを主宰しながら、シンプルで体にやさしい中国家庭料理のレシピを雑誌や書籍、テレビなどで幅広く発信している。家庭では二人の子供をもつ母。最新刊は『最小限の材料でおいしく作る9つのこつ』(大和書房)。

店舗情報店舗情報

つろく
  • 【住所】京都府京都市中京区二条通高倉西入松屋町51
  • 【電話番号】075-275-3926
  • 【営業時間】17:00~22:00(L.O.)
  • 【定休日】日曜
  • 【アクセス】地下鉄「丸太町駅」より7分
dancyu 夏号
dancyu2025年夏号
A4変型判(160頁)
2025年6月6日発売 / 1,500円(税込)

文:船井香緒里 写真:エレファント・タカ

船井 香緒里

船井 香緒里 (フードライター)

福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。料理専門誌やカルチャー誌、ウェブなどの編集・執筆を行う。食の取り寄せサイトや飲食店舗などのキュレーションを手がけるなど、食を軸としながら縦横無尽に展開。暴飲暴食を日課とし、ジョギングとロードバイクにて健康維持。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。