鎌倉にある「間借り風」カレー店を訪れた松尾さん。カレーの味はもちろんおいしいが、付け合わせのレモンが特徴的で――。
鎌倉駅の改札を鶴岡八幡宮側に出て右に行ってみると、東急ストアの入るビルがある。昼間であれば、その裏側に入って進むと、「咖哩 檸檬」と書かれている黄色い幕が見える。その脇の階段で二階に上がると、立ち呑みビストロ「ランデブー・デザミ」とあるけれども、ランチタイムはカレー店「檸檬」なのである。窓側に3席、壁に2席と立ち呑みスペースで、気さくなご主人がひとりで切り盛りされている。
2年ほど前の昼時に、たまたま前を通りかかり、衝動的に階段を上がったのが最初だった。身のこなしの洗練された店主が無駄なく動く様子が小気味よかったのを覚えている。いつも3種類用意されていて、スパイスチキンカレー、しらす花山椒カレー、エビとカブの青唐ココナッツカレー、ポークビンダルー、牛すじとゴボウの煮込カレーなどがあり、定番2種と季節もの1種であることが多い。
今回は、スパイスチキンカレーと牛すじとゴボウの煮込カレーのあいがけとラッシーのセットをお願いした。チキンカレーはスパイスのバランスが絶妙な、誰が食べても納得できる味わい深さ。辛さは程よく、刺激を求める人向けにふりかけ用のガラムマサラがカウンターに配備されている。
牛すじとゴボウの煮込カレーは、ゴボウの土の香りを生かすシナモンとクローブをきかせた香りと辛さになっている。
この2種に、付け合わされたレモンを搾って酸味の味変を楽しむことができる。いや、本当にカレーにはレモンの酸っぱさがよく合うのだ。すこし食べたところで、レモンの皮の端をスプーンで切ってカレーに混ぜるとまた軽い苦味が爽快さをもたらしてくれる。
元々はフレンチのシェフで、十数年前に開店した夜の「ランデブー・デザミ」はワインなどの洋酒を効果的に楽しめる居心地の良いビストロだ。価格もリーズナブルで、毎日のように来る人もいる。地元のお客さんで賑わう店だが、場所柄観光客も多いようだ。
ここの空間が空いている昼間を利用して、間借り風のカレー店を6年ほど前から開いておられる。「間借り風」と言ったのは、同じ人がやっているけれども違う店の雰囲気で営業しているからだ。
窓の向かいの、東急ストアの搬入口の出入りを見ながらラッシーを飲み干して、ほのぼのとご馳走様でした。
また夜にも来ます。
文・撮影:松尾貴史