下北沢で見たことのないカレー店を見つけた松尾さん。そこで提供されるカレーはこれまたほかではお目にかからない一皿で――。
宮崎駿監督の数々の名作を鑑賞するたびに共通して感じるのは、「なんと緑色には多くの種類があるのか」という驚きと感慨である。同じく、林家ペー師匠を見ていて感心するのは「ピンク色の多さ」だが、横道に逸れ過ぎるので本題に。
下北沢で最も有名な商店街と言っていいだろうか、下北沢交番の先から始まる一番街のほぼ終点、「三河屋酒店」にほど近いところに、見たことのないカレー店があった。開店直後で空いていたのでふらりと入ることができた。
ここで提供されるのは、緑色のカレーである。しかし、よく見かける「タイ風グリーンカレー」とは一線を画している。
下北沢「般°若(パンニャ)」からほど近い、下北沢一番街を登ったところにある「エイリアンズ」は、最近できたばかりの店だ。
ここのカレーはすべてが緑色、牛すじのカレー一択の潔さである。
しかし、牛すじの料理でこんな色合いのものは初めての出会いだった。
タイのグリーンカレーのペーストは使わず、自家製のものを作り、出汁で割っているようだ。
グレイビーに油も使っていないらしい。副菜の小松菜は、フェネグリークとマスタードシードのピックルと、ムングマメをマリネした物などだが、どれも歯応えが良く噛み締めながら風味が味わえる。
フレッシュな香り(フェンネルだろうか)がする胡瓜のピクルスはきっとどんなカレーにも合う。
トッピングしてもらったピーマンは、スライスしてあるだけかと思ったら酸味のある炒め物になっていて、これもいい変化を楽しめる。
程よい量のパクチーも爽やか、玄米、白米、押し麦のブレンドのライスは味が幾層にも感じる。バジルの葉を齧りながらアクセントを楽しむのもいい。頼みそびれたが、紙エプロンのサービスもあるようだ。
かつてここには有名店の「カレーの惑星」があった。跡地に居抜きで入られたのだろうと思っていたら、実は系列店なのだとか。
「エイリアンズ」の店名の由来は何だろう。「惑星の外側」という意味なのか、古の火星人像が緑色だという印象からだろうか。
食後のアイスチャイに緑色を期待したが、やはり通常の色だった。当たり前だが。
文・撮影:松尾貴史