dancyu本誌から
dancyu12月号「渋谷 新宿 新大久保」絶賛発売中!

dancyu12月号「渋谷 新宿 新大久保」絶賛発売中!

若者が集うセンター街を擁する渋谷、世界一の乗降客数を誇る新宿、注目度抜群のエスニックタウン・新大久保――。山手線の西側に並ぶ、雑多でエネルギッシュなこのエリアにだって、大人が満足できる穴場的な美味スポットがちゃんとあるんです!大都会をわくわく攻略するための、食いしん坊のための探検マップをお届けします。

表紙
P8-9
P10-11
P58-59
P105

旨いものメトロポリス

dancyu2024年12月号
高校卒業後、父の仕事の都合でアメリカ合衆国の東海岸にしばらく暮らしました。そこでの食体験は衝撃的でした。たとえばドライブ中に立ち寄った、デラウェア州の一軒家レストラン。パスタを注文して出てきたものは、ぶよぶよとしたマカロニでした。トマトソース缶を開けただけで味つけを忘れたようなピンボケ味のトマトソースがかかっているだけ。具はありません。メニューはそれ一種類のみ。「これで商売になるの!?」と心底驚きました。これはかなり極端な事例ですし、ニューヨークや西海岸だったら違ったのでしょうが、なかなかのカルチャーショックでした。全国津々浦々、どこで食べても普通においしい日本の外食水準が世界の常識ではないと痛感。文化人類学に興味があった私はそれまで「モンゴルは騎馬民族でかっこいいな、未知のアマゾン流域も面白そう」などと夢見がちでしたが、「留学しても、その国の食事がタロイモばかりの可能性もあるぞ」と冷静に考え直し、その後進んだ大学ではタイ語を専攻したのでした。タイ料理は確実に美味しいですからね。

縁あって、食に関わる仕事をして数十年。日本は改めて世界一の旨いもの大国だなと思います。何がスペシャルかというと、和食という深い食文化をもちながら、外国の料理についても層が厚く、世界のトップレベルに達しているところです。本場のフランス料理も中華料理も素晴らしいですが、確固とした食文化がある国では普通、外国料理を日本人のようには追究しないんですよね。

旨いもの大国の中でも、東京は特にあらゆるジャンルの飲食店が生まれては消え新陳代謝を繰り返す、生き物のようなメトロポリス。今号は、とりわけ都会的で雑多な印象のある渋谷、新宿、新大久保を取り上げ、宝探しさながらに旨いものにありつくための「大人の探検マップ」、という気持ちでつくりました。大都会の街角で、心ときめく美味との遭遇がありますように。
dancyu2024年12月号
dancyu2024年12月号
特集:渋谷 新宿 新大久保
A4変型判(152頁)
2024年11月6日発売/1,200円(税込)

写真:三東サイ