dancyu本誌から
dancyu11月号「人生が楽しくなるキッチン」絶賛発売中!

dancyu11月号「人生が楽しくなるキッチン」絶賛発売中!

好きなものを思いのままにつくり、食べる喜び。愛しの道具に囲まれて、料理に没頭する多幸感。キッチンは、まさにワンダーランド!自炊しなくても済む時代だけど、だからこそ、台所に立たないなんてもったいない。キッチンを思い切り楽しんでいる人が実践している、台所の時間が百倍楽しくなるヒントを紹介します。キッチンが変われば、料理が楽しくなる。

表紙
P18-19
P48
P75

台所のルール

dancyu2024年11月号
うちの家族は、炊き上がったご飯を最初にざっと混ぜず、いきなりよそい始めることがあります。ちゃんと混ぜるように言うと、「湯気が熱いんだもん」と小学生の次女、「急いでたからさ。必ず混ぜないとダメなの?」と夫。それに対して私は「家庭科でも混ぜるように習うでしょ?常識!」と言い放ってから、「あ、言っちゃった」と思いました。台所のルールに、本当は常識や正解はないからです。その人がやらないのは、する必要がないと無意識に判断しているからなんですよね。

台所はそもそも、布巾の扱い方一つで大げんかに発展しかねない、家庭内の火薬庫。こだわりが強いほうがついつい正論をふりかざし相手を一方的に責めがちです。でも実は、こだわりの弱いほうが、無自覚のうちに合わせてくれていることもあるはずなのです。その恩恵を見落としがちではないでしょうか(自戒を込めて)。

たとえばわが家では、塩を入れる瓶の蓋がブリキ製です。私の趣味で選んだものの、両手を使わないと開けられないので、実はちょっと使いにくい。でも家族の誰も「片手で開けられるプラスチック製容器にすべきだ!」などと言うことなく使ってくれています。ありがたや。

こんなこともありました。うちの次女は家族一の片付け番長で、散らかし上手の長女とぶつかりがちです。ガミガミ言う次女にあるとき、「あなたがきちんとするのは立派なことだけれど、人にはだらしなく生きる権利だってあるんだよ」と諭しました。するとその後は、どうしたら片付けやすくなるのか、仕組みを考えて提案してくれるようになったのです。

自分のやり方が常識だと信じ込んでいると、実行しない相手が悪いと断じることで終わってしまいがちです。でも自分の常識が相手の常識じゃないと気づくことで、現実を動かすための工夫とアクションが生まれるのではないかと思います。

dancyu編集長 藤岡郷子
dancyu2024年11月号
dancyu2024年11月号
特集:人生が楽しくなるキッチン
A4変型判(132頁)
2024年10月4日発売/1,200円(税込)

写真:合田昌弘