前に訪れたときに、店主とインド映画談義に花を咲かせたカレー店を再訪した松尾さん。インド製の食器や食材、スパイスも取り揃えているインド愛溢れる店主がつくる一皿とは――。
名古屋駅から地下鉄で一本、終点の藤が丘で降りて徒歩だと15分ほどかかるが、ゆるい上り坂の右カーブを進んで、郵便局とデニーズの角を左折、信号で県道を右というシンプルな道順でたどり着く。
7年ほど前だったか、東京から大阪へ車で向かう途中に、どうしてもうかがいたかったので立ち寄ったのが最初だったか。駐車場があるのもありがたい。
ご主人の個人輸入なのか、スパイスなどの食材や食器なども販売されている。傾けると「チリン、チリン」と音の出るインド製の二重ステンレスカップを買って帰った物は自宅で今でも使っている。
前回は、「PT」というインド映画がいかに素晴らしいかという話で話でご主人と盛り上がった。インド愛がすこぶる強い方なのだ。
料理は、素材や製法に妥協せず、すべてに一家言もつご主人の、あくなき探究心の結晶をいただく感じだ。とは言え、いわゆる「こだわり」などではなく、これも愛情のなせる業だろう。そして「頑固一徹」などという雰囲気とは程遠い柔和なお人柄なのだ。
自家製パパドゥもこちらの特色のひとつで、黒もやしのようなウーラット豆を使ったものが美味い。通常は小麦粉を混ぜたり、炭酸ナトリウムでサクサク感を出したり、塩分が多かったり(塩分についてはインドの気候の影響もあるのではないかとも思われる、とご主人の分析も)するので、オリジナルのものを出しておられるそうだ。
私のイニシャルの「M」型を探してくれたがこの日は切れてしまっていたので「T」型を添えてくれた。
カレーのメニューはAセット、今回はチャナ豆と辛口フィッシュカジキカレーをいただいた。細胞をきれいにしてくれそうな、健康的かつ、言わずもがなだが素晴らしく旨い。ターメリックライスの、不思議と青い部分はもちろん合成着色料ではない。天然成分で「バタフライピー」という、日本語でいうチョウマメ(蝶豆)の花びらの色素だ。
色々と遊び心も発揮されていてプレート上が楽しい。おまけにこちらではサンバルを頼むとお代わりができるのもありがたい。食後はおかわり自由のホットチャイを二杯飲んで、帰りはバスで地下鉄東山線の本郷駅まで。便利なものだ、とは思いつつ、次はいつ来られるだろうか。
文・撮影:松尾貴史