松尾貴史のカレードスコープ
7年ぶりでもすこぶる美味しいミックスカレー|松尾貴史のカレードスコープ(82)

7年ぶりでもすこぶる美味しいミックスカレー|松尾貴史のカレードスコープ(82)

所用で要町を訪れた松尾さんは、昔ふらりと入ったお店のことを思い出し、久しぶりにたずねてみることに。7年ぶりの訪問で堪能した一皿とは――。

一滴でも残したくない美味しさ

7年ほど前だろうか、テレビ番組の取材で近所を訪れ、たまたま見つけて入ったカレー屋さんで、すこぶる美味かったのを覚えている。その時は、生クリームでカレーの上にカエルのイラストレーションを描いてくれたような気がするが、記憶が定かではない。

今回、またまた近所に所用があり、懐かしの味を楽しみたくなって訪れた。戸を開けるなりご主人が「しばらくです」とすぐに気づいてくれた。手羽元が3本のチキンカレーか野菜カレーかを迷い、手羽元2本と野菜が入った「ミックスカレー」の中辛、ライスをやや多めでお願いした。

キッチン

しばらく調理するご主人の背中を見たり、棚に十数体あるカエルの置物を眺めたり、奥様と世間話をしたりしているうちにミックスカレーが到着した。旨みの中にほんのり甘さを感じるのは野菜由来だろうか。大根の歯触り、ごぼうの煮え具合と味の染み込み、さつまいもとじゃがいもの風味、食感の違いが楽しい。手羽元は肉も軟骨も骨からするりと外れて食べやすく、軟骨部分まで全て旨い。さらりとしたカレーのグレイビーなので、最後は皿を傾けてスプーンでしつこく集めるほど美味しかった。

カレー

最近、池袋にもカレーの専門店が増えたような印象があるが、その中では古株ではないだろうか。店名はなぜ「カエル食堂」なのか。もともと「◎◎食堂」にはしたかったらしく、お名前から「山野食堂」にしようかとも思ったが、覚えにくいかもという懸念から、タイに住む長年の友人が毎年土産にくれるカエルの置物を見るうち、この名前に決定したとか。カエルは「福がかえる」と縁起も良く、昔からファンが多いので納得だ。そして確かに一度見たり聞いたりしただけで覚えやすい。私も7年前に訪れたきりなのにしっかりと覚えていた。

カエルの置物

奥様から教えてもらった、太めの道路の反対側にある「オールシーズンズ珈琲」というカフェで深煎りコーヒーを飲みながらカレーの余韻を楽しんだ。次はもっと早く再訪しよう。

外観

店舗情報店舗情報

かえる食堂
  • 【住所】東京都豊島区池袋3-6-1 第2京花荘 1F
  • 【電話番号】080-6890-6894
  • 【営業時間】11:30 - 15:00(L.O.)
  • 【定休日】日曜 月曜
  • 【アクセス】東京メトロ「要町駅」より3分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。