松尾貴史のカレードスコープ
口の中が灼熱と化す辛口カレー|松尾貴史のカレードスコープ(77)

口の中が灼熱と化す辛口カレー|松尾貴史のカレードスコープ(77)

ひょんなことから辛口のカレーを食べたくなった松尾さんは、久しぶりに辛いで有名な店を訪ねることに。改めて実感したその辛さと旨さとは――。

驚くほど辛いのに止まらないスプーン

世田谷は梅ヶ丘のBARで、年配の夫婦連れのお客さんが「若い頃から通っているけど、美味いよね、すごく辛いけど」などとカレー店の噂話をしている。聞くともなしだが聴こえてくるので仕方がない。「カーナピーナ」と言っている。おお、そこなら知っている、以前食べに行った。相当の辛さだが美味いカレーだった。翌朝目覚めると、もう辛口のカレーの味になってしまっている。またあそこのカレーが食べたくなったのだ。

以前訪れたのは5、6年前だったか。開店時間早々に来たら、ミュージシャンでカレーのエキスパート、小宮山雄飛さんと店内でばったり遭ってカレーをご一緒したのを思い出した。なぜか2人とも白Tシャツで笑ってしまったのだった。

小宮山雄飛さんと

今回も開店時間前に着いて、準備をしている気配を感じて安心し、しばらく待つことにした。起きる時間のせいで朝食を食べそびれることが多い私は、カレー店のランチ時間の開店直前に行って一番客になることが多い。
マイルド、セミホット、ホット。この三段階から選ぶのだけれど、マイルドで他の多くのカレー店の辛口、セミホットが他店の「激辛」くらいではないだろうか。以前の辛さを忘れてしまっていたので、つい「セミホット」と注文してしまった。

カレー

通常なら先に食べてしまうセットのサラダを「舌休め」に使うことにして、カレーが到着するのを待った。果たして登場したカレーは以前と変わらぬ、オーソドックスな見た目である。ところが、一口食べた途端に口の中は灼熱、知っているのに驚くほど辛い。ライスに添えられている玉ねぎのアチャール(スライスオニオン)がオアシスに感じるも、すぐに食べてしまったので単品で追加注文した。
辛くとも旨さを感じ続けるのでスプーンは止まらない。「汗の小一升もかく」という古めかしい言い方は大袈裟だが、汗がとめどなく噴き出して紙ナプキンを多く消費してしまった。
食べ終わった後、ご主人としばし世間話を。これだけ辛い理由を問えば、「辛いのが好きなんで」と明快なお答え、有難うございます。「カーナピーナ」の名前の由来を奥様に尋ねると、ヒンディー語で「カーナ」は食べる、「ピーナ」が飲むと言う意味だそうだ。確かに水を大量に飲ませていただきました。

外観

店舗情報店舗情報

カーナ・ピーナ
  • 【住所】東京都目黒区祐天寺2-17-9
  • 【電話番号】03-3710-5483
  • 【営業時間】11:30~14:30 (L.O.) 17:00~20:30 (L.O.)
  • 【定休日】月曜 火曜
  • 【アクセス】東急東横線「祐天寺駅」より3分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。11月に新刊『違和感にもほどがある!』が発売、その他著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』(すべて毎日新聞出版社)等がある。